市販医薬品の加熱挙動の分析
Application Note
TA-6006
何がわかるのか?
市販の医薬品の加熱挙動を示差熱天秤-光イオン化質量分析(TG-DTA-PIMS)法[1]によって分析してみました。 光イオン化質量分析法では、加熱による重量変化に応答して分解生成するガスを分子イオン状態にてリアルタイムに検出、弁別することができるため、医薬品の熱分解プロセスの解析が容易となり、分析精度と測定効率が大幅に向上します。
測定・解析例
図1 医薬品の加熱プロセスのTG-DTA-EI/PIMS曲線とマススペクトルの比較
(上図:TG-DTA-EIMSとEIマススペクトル, 下図:TG-DTA-PIMSとPIマススペクトル)
高血圧症、狭心症、不整脈の治療薬(主成分:メトロプロロール酒石酸塩)をTG-DTA-EI/PIMSにて測定し、200℃付近の発生ガスピークで得られたEIスペクトルとPIスペクトルを比較した結果を図1に示します。従来のEIMSでは、多種類の生成ガスの解裂イオン同士が互いに重なり合うため、得られたマススペクトルから直接、発生ガス成分を定性することは困難です。これに対して、ソフトイオン化の効果によってもたらされるPIMSスペクトルは、発生ガスが図中に示すm/z 96、m/z 110、m/z 126、m/z 144ならびm/z 152の5種類の成分から構成されることを容易とし、しかもリアルタイムに弁別分析できます。
参考文献
[1] 有井忠, "スキマー型示差熱天秤−光イオン化質量分析法−TG-DTA-PIMS", リガクジャーナル,41 (2010), No.2, 20-25
推奨装置: 示差熱天秤-光イオン化質量分析同時測定装置ThermoMass Photo