市販医薬品の比較分析
何がわかるのか?
市販されている医薬品(A、B、C)、3点を比較分析してみました。
主成分が同じでも、きれいに成形できるような成分や保存料など、主成分以外が異なったり、薬の形の製法が違うこともあります。また、非常にわずかですが、主成分の純度が異なることが考えられます。
示差熱天秤-質量分析(TG-MS)法[1]を用いて、不活性ガス中の医薬品の熱分解プロセスを詳細に分析することにより、市販されている医薬品(A、B、C)3点間の微少な差異を観測することができます。
測定・解析例
消炎、鎮痛剤(主成分:ロキソプロフェンナトリウム水和物)の市販品Aと2種類の医薬品(B,C)のTG-MS結果の比較を図1に示します。それぞれの医薬品に共通して、構成原料の分解成分を示すm/z 18, 55, 70, 105, 120のイオン生成を付随する3段階の重量減少が観測されます。ここで、医薬品Aの分解成分には、156℃と280℃に発生ピークをもつ2段階の脱水(m/z 18)と、同じく285℃にピークをもつCO2(m/z 44)生成が顕著に観測できます。これに対して、医薬品Bでは、2段目の脱水ピーク強度が著しく低下しているとともにCO2の生成も僅かになっています。さらに、医薬品Cでは、2段目の脱水ならびにCO2の生成は観測できなくなり、かわりに2段目の温度域には、m/z 55とm/z 70の成分が顕著に生成しています。
上記の測定結果から、示差熱天秤による分解反応の違いを質量分析することによって分解成分を明確にすることができます。
図1 医薬品Aと2種類の医薬品B,CのTG-MS結果の比較
参考文献:[1] 有井忠, “スキマ―型示差熱天秤-光イオン化質量分析法-TG-DTA-PIMS-”, リガクジャーナル,4 (2010) 20-25.
推奨装置: 示差熱天秤-光イオン化質量分析同時測定装置ThermoMass Photo
【補足資料】
市販されている医薬品のXRDデータの比較分析
市販されている医薬品Aと2種類の医薬品(B,C)、3点のXRDデータプロファイルを比較してみました。
医薬品Aと医薬品B、Cとでは、僅かながら回折ピークに差異(◆)がみられ、結晶多形や組成などに起因すると思われる微小な違いが観測されます。
XRD測定条件:
・X線: Cu / 40 kV / 50 mA
・カウンタ: D/teX Ultra
・発散スリット: 1/2°
・スキャンスピード: 10.0 °/min.
・サンプリング幅: 0.01 °
・走査軸: 2θ/θ
・走査範囲: 5.0 ~ 30.0 °