電池評価
充放電サイクル測定しながらX線回折(XRD)やX線顕微鏡(XRM)測定することにより、結晶相の変化や劣化挙動を調べることが可能で、材料の特性や挙動を非破壊で観察できます。
ラミネートセルのXRD-充放電(オペランド)測定と電池内部の観察
1. ラミネートセルのオペランド測定
正極および負極材料の反応挙動は、放電・充電過程でのオペランド測定により解析することができます。繰り返し測定することで、充放電サイクル中の材料の劣化挙動を直接観察することができます。、正極材(NMC)の挙動に着目し、リチウム金属酸化物電池のインオペランドXRD測定を実施した結果を示します。NMCの劣化を調べるために、充放電サイクルを繰り返しながら測定を行いました。放電・充電サイクルの回数を増やすと、電池の容量が減少する一方で、c軸の格子定数が膨張することがわかりました。この格子膨張は、正極からのLiイオンが負極の炭素から離脱していないことに起因しています。キャプチャーされたLiイオンは充放電の際に使用されないので、実質的に電池の蓄電容量が減少します。キャプチャーされたリチウムイオンが増えると、やがて金属デンドライトが発生し、電池が短絡してしまう恐れがあります。
図. 充放電サイクル測定におけるウォーターフォールプロット
(横軸は2θ、縦軸は経過時間、色は強度を示しています)
図.充放電サイクルに伴うNMCの格子定数cの変化および容量変化
サンプル提供 : (株)東レリサーチセンター
2.充放電中の電解質内クラックの可視化
電池の劣化は様々な要因によって引き起こされます。マクロ的に考えると、空孔、クラック、粒子の崩壊、界面剥離などの問題が挙げられます。内部観察法であるX線CTを用いれば、電池を分解することなくその場で内部を観察することが可能です。さらにX線顕微鏡(XRM)を用いることで、X線マイクロCTよりも高コントラスト・高解像度の計測が可能です。電池動作中の固体電解質内のクラック成長を非破壊で可視化した結果を示します。
図. 固体電解質のX線CTイメージ 2.5 micron/voxel
下記論文を参考
Misae Otoyama, Motoshi Suyama, Chie Hotehama, Hiroe Kowada, Yoshihiro Takeda, Koichiro Ito, Atsushi Sakuda, Masahiro Tatsumisago, and Akitoshi Hayashi,
ACS Applied Materials & Interfaces 2021 13 (4), 5000-5007