エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX CG II 大気粉塵捕集フィルター上の Pb 分析
はじめに
近年、高濃度のPM2.5を含んだ大気が様々な環境影響を及ぼしていることが注目を集めています。大気中に浮遊するエアロゾル粒子の成分は、人体の健康影響や地球規模での環境影響評価を行うための情報として、非常に重要です。蛍光X線分析では、フィルター上の微粒子を広い元素範囲にわたって、非破壊で迅速・簡便に測定可能です。特に、2次ターゲットを用いた偏光光学系のエネルギー分散型蛍光X線分析装置NEX CG IIは、測定スペクトルのバックグラウンドが低く、検出下限の優れた分析を行うことができます。今回は、フィルター上に捕集された大気粉塵試料中の鉛(Pb)分析について紹介します。
測定・解析例
図1 試料の分析の流れ
図1 に試料の分析の流れを示します。溶液化などの試料前処は不要で、フィルター試料をそのまま置くだけで測定を始めることができます。また、試料交換機を用いることで複数試料の連続測定が可能です。その後、ソフトウェアで試料の設定を行います。このとき、“らくらく分析機能”を用いると、試料位置やアプリケーション等を最小のステップで設定でき、すぐに測定を始めることが可能です。測定終了後、ソフトウェアによるスペクトル同定及びRPF-SQX分析(定量分析)が自動で行われ、スタンダードレス分析結果が出力されます。このようにNEX CG IIでは、煩雑な試料処理を行うことなく、手軽に分析結果を求めることができます。
フィルター捕集試料の分析例として、エアロゾル標準試料NIST2783(鉛Pbの認証値32 ng/cm2)の定性スペクトルを図2に示します。Pb Lα線、Pb Lβ1線のピークが明確に検出されています。また、計算で得られる検出下限(3σ)は1000秒測定時に2.4 ng/cm2となり、非常に低い検出下限での分析が可能です。
図2 エアロゾル標準試料(NIST2783)の定性分析チャート
推奨装置 エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX CG II