卓上型全反射蛍光X線装置NANOHUNTER II ワイン中の微量元素分析
はじめに
ワインには~1%のK、Caをはじめ、微量のFe、Mn、Cuなどが含まれており、その成分分析は微量金属元素の食事摂取や、産地・ブランド偽装防止などの観点から注目を集めています。誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)などの化学分析法では、ワインに含まれているアルコールなどの有機成分の分解・除去が必要となります。全反射蛍光X線分析法(TXRF法)は、前処理なしで試料を基板に滴下・乾燥するだけで測定することができます。ここでは、TXRF法によるワイン中に含まれる微量元素の分析例をご紹介します。
測定・解析例
表1 チリ産赤ワインのTXRF分析結果 (単位:mg/L)
チリ産赤ワインに含まれる微量元素をTXRFにより分析しました。その際、ワイン試料は蒸留水などで希釈することで、K、Caなどの軽元素に対するマトリックス効果が軽減され、分析値の誤差を小さくすることができます。ここでは、ワインを蒸留水により1:1で希釈し、そこから990 μLを採取して100 mg/LのGa内標準液を10 μL添加しました。調製溶液から10 µL採取し、シリコーンコート済みの石英ガラス基板に滴下、乾燥して測定を行いました。TXRF測定により得られたスペクトルを図1に示します。Siは石英ガラス基板に、Gaは内標準液(Internal standard, IS)に由来するピークです。微量元素として、S、K、Ca、Mn、Fe、Cu、Zn、Br、Rb、Srのピークが検出されました。これら微量元素に対して内標準法により定量分析を行いました。結果を参考値と併せて表1に示します。成分濃度は分類や産地などで異なっていましたが、典型的な参考値とよく合っていることがわかります。TXRFでは、液体試料を特別な前処理なしで容易に分析を行うことができます。
図1 チリ産赤ワインのTXRFスペクトル
参考文献: 1) R. Dalip, E. Margui, L. Borgese, F. bilo, L. E. Depero: Spectrochim. Acta B, 120 (2016) 37-43.
2) 国村伸祐,河合潤: 分析化学,58 (2009) 1041-1054.
推奨装置
- 卓上型全反射蛍光X線分析装置 NANOHUNTER II