微小部X線回折による ばねの深さ方向の応力分布評価

    Application Note B-XRD3001

    はじめに

    ばねの高強度品質のためショットピーニング処理がよく用いられています。ショットピーニング処理は、金属部品の表面に鉄やセラミックスなどの投射材を高速で噴射して、圧縮応力を残留させる手法です。この圧縮残留応力により、疲労強度や応力腐食に対する耐久性が向上します。ショットピーニング処理の管理やショットピーニング加工によるばねの硬さの疲労強度向上の効果の評価手法として、材料表面や深さ方向のX線回折法による残留応力測定が利用されています。ここでは、物理的な力を加えずに試料表面を電気化学的に均一に研磨できる電解研磨を行い、コイルばねの表面を段階的に取除きながら、X線回折法による残留応力を測定し、試料表面からの深さ方向の応力分布を評価した例を示します。

    測定・解析例

    電解研磨によりコイルばねの表面を230 μmの深さまで数十 μmずつ取除いて、ばねの周方向と軸方向の残留応力を測定しました(図1)。試料表面からの深さに対する残留応力値を図2に示します。両測定方向とも、試料表面から約50 μmの深さまでは圧縮応力が徐々に増大し、50 μm以降では深くなるにつれ圧縮応力が緩和していくことがわかりました。この結果から、コイルばねには方向に依存しない圧縮応力が付加されており、試料表面から約50 μmの深さに最も強い 1 GPa 以上の圧縮残留応力が作用していることがわかりました。

    試料に対する応力の測定方向

    図1 試料に対する応力の測定方向


    ショットピーニング処理されたコイルばねの深さ方向の応力分布

    図2 ショットピーニング処理されたコイルばねの深さ方向の応力分布


    参考文献:  日本工業規格 JIS B 2711: 2013 ばねのショットピーニング (2013)

     

    推奨装置

    • 微小部X線応力測定装置 AutoMATEⅡ + 電解研磨装置
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Stressプラグイン)

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