III-V 族窒化物薄膜のチルト幅・ツイスト幅の 試料面内分布評価
はじめに
深紫外線LEDは、水銀ランプに代わる環境負荷の少ない紫外線源として普及が望まれています。近年はその殺菌機能が特に注目を集めており、早期の実用化が期待されています。発光効率向上と長寿命化には、AlGaN発光層のベースとなるAlN層の高品質化が求められます。本測定例では、製品化・量産化の段階で重要となるAlN層のチルト幅・ツイスト幅の試料面内分布を評価しました。
測定・解析例
2インチのc面サファイア基板上のc面成長AlN薄膜試料の中央・右端(X = 25 mm)・上端(Y = 25 mm)で、AlN 0002反射および101 ̅1反射のロッキングカーブ測定(ωスキャン)を行いました。得られたプロファイルを図1に示します。いずれの反射も、試料の中央ではピーク幅が狭く、試料の端ではピーク幅が広がる傾向が見られたことから、試料の端では結晶品質が低下していることが推測されます。
同様の測定のXYマッピングを行い(測定間隔:X, Yとも5 mm)、測定点ごとのピーク幅(FWHM)を求めました。0002反射のピーク幅からはチルト幅、101 ̅1反射のピーク幅からはツイスト幅が得られます。ピーク幅のマップ表示と統計情報を図2に示します。試料中心から約20 mm以内の範囲ではチルト幅・ツイスト幅ともに小さく、標準偏差も小さいことがわかりました。一方、試料中心から約20 mmより外側では、チルト幅・ツイスト幅が全体的に広く、また測定位置間の標準偏差も大きいことがわかりました。
図1 AlN のロッキングカーブ(ωスキャン)プロファイル (a)AlN 0002反射 (b)AlN 101 ̅1反射
図2 AlNのチルト幅・ツイスト幅のXYマッピングと統計情報 (a)チルト幅 (b)ツイスト幅
試料ご提供: 徳島大学 永松謙太郎先生
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab(χφZアタッチメントベース搭載)+XY-4インチφアタッチメントヘッド
- 統合X線解析ソフトウェア SmartLab Studio II (Data Visualizationプラグイン)