インプレーンX線回折法による 単結晶基板上の有機薄膜の結晶方位評価
はじめに
有機TFT(thin film transistor、薄膜トランジスター)は印刷法による低コストでの大量生産が可能であり、フレキシブルなプラスチック基板上に形成できるため、薄くて軽いディスプレイを駆動させるTFTとして期待されています。トランジスターとしての性能を左右するのはキャリアの移動度ですが、有機分子の配向状態を制御することで、同じ分子でも移動度が向上する可能性があります。今回は、ペンタセンに次ぐ移動度を示すセキシチオフェン(Sexithiophene、以下6Tと略す)薄膜の分子配向をX線回折により評価しました。
測定・解析例
KBr 100 単結晶基板上に6Tを製膜しました。図1にアウトオブプレーンX線回折(2θ/θスキャン)プロファイル、図2にインプレーンX線回折プロファイル(1)を示します。
図1 アウトオブプレーンX線回折(2θ/θスキャン)プロファイル(試料表面に平行な格子面による回折)
図2 インプレーンX線回折プロファイル(試料表面に垂直な格子面による回折)
左:2θχ/φスキャン、右:6T 020回折ピークのφスキャン
図1および2より、6T分子は3次元的に配向しており、KBr基板との方位関係は
[100]6T // [001] KBr (試料表面に平行な格子面)、[010]6T、[001]6T//<100>KBr (試料表面に垂直な結晶軸)
であることがわかりました。AFM像からは、この配向状態がKBr基板<100>ステップにおける核形成・成長に起因する可能性が示唆されました(1)。
試料ご提供:東京大学 斉木研究室 様
参考文献: (1) S.Ikeda, M.Kiguchi, Y,Yoshida, Y,Kiyoshi,T.Mitsunaga, K,Inaba, K.Saiki: J. Crystal Growth., 265(2004) 296-301.
推奨装置
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab (インプレーン軸・φ軸搭載) + RxRyアタッチメント