インプレーンX線回折法による 磁性薄膜の結晶系評価
Application Note
B-XRD2003
はじめに
次世代の超高密度磁気記録媒体として、金属微粒子を薄膜中に分散させたグラニュラー膜が注目されています。中でもFePtの規則相(正方晶)は、磁気異方性が特に高く、耐食性・耐酸化性に富むことから、実デバイスへの応用が期待されています。しかし、製膜条件によっては特性の劣る不規則相(立方晶)が同時に生成するため、ナノ粒子・薄膜の状態でこれらを判別する技術が必要です。薄膜試料の表面すれすれにX線を照射し、表面面内方向の規則構造(結晶構造)を調べるインプレーン回折法を用いれば、厚さわずか数nmという極薄膜でも結晶相の同定が可能です。また試料表面へのX線の入射角度を変えることで、深さ方向に解析を行うこともできます。
測定・解析例
図1に、ガラス基板上にFePt膜(厚さ15 nm)を製膜し、その上にAg層を4通りの膜厚で堆積した試料のインプレーン回折測定プロファイルを示します。Agの膜厚が増えるに伴い、FePt規則相への結晶化が進行していることがわかります。 また、厚さわずか1 nmのAgからの回折線が検出されています(1),(2)
図1 Ag層の膜厚の異なるFePt膜のインプレーン回折測定プロファイル
図2は、Ag膜厚1 nmの試料に対し、試料表面への入射角度を変えて測定したものです。入射角度が浅い時にAgからの回折線が相対的に強くなっており、Agは試料表層部に存在することが予想されます。
図2 入射角度依存性
参考文献: (1) Z. L. Zhao et al: Appl. Phys. Lett., 83(2003), 2196-2198.
(2) Z.L. Zhao et al: J. Appl. Phys., 95(2004), 7154-7156.
推奨装置
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab(インプレーン軸・φ軸搭載) + RxRyアタッチメント