フィルム垂直透過X線回折法による医薬品の配向抑制測定
Application Note
B-XRD1154
はじめに
配向性を有する医薬品試料は、一般的な反射法で測定する場合、試料充填時の圧力により選択配向が生じます。強度比が正しい回折プロファイルを得るためには、選択配向抑制が重要となります。試料の保持にフィルムを用いた透過法では、試料充填作業が簡便で、反射法に比べて圧力がかかりにくいことが特長です。ここでは、選択配向が生じやすい安息香酸と(-)-キニーネ硫酸塩二水和物について、反射法とフィルム透過法での測定データの違いを 紹介します。
測定・解析例
図1に各手法の試料充填について示します。反射法では、ガラス板を使い、擦切って試料充填を実施しました。一方、透過法では、2枚のフィルムで挟むだけの簡便な試料充填を実施しました。
図1 各手法の試料充填方法
図2に各手法で得られた回折プロファイルとデータベースパターンを示します。回折プロファイルに着目すると、 反射法では特定の2~3本の回折ピークが高強度に観測されていますが、透過法では、高強度の回折ピークが多数観測されていることがわかります。さらに、測定データと化合物のデータベースパターンの一致度を示すFOMの値が、透過法では小さいことから、選択配向が抑制され、データベースと相対強度の一致度が高い回折プロファイルが 得られたことがわかります。このようにフィルムを用いた透過法は、簡便な試料充填作業で、選択配向を抑制した 測定ができる優れた手法となります。
図2 各手法の回折プロファイルとデータベースパターン
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + CBO-E集光光学系 + ASC-6 反射/透過アタッチメント