DD法®による結晶多形の定量分析
はじめに
Direct Derivation (DD)法®では、各結晶相から散乱されるX線強度の総和と化学組成の情報を用いて定量分析を行います (1),(2)。医薬分野等においては、多くの化合物がデータベースに収載されていません。その場合、従来の手法では定量値の算出が困難であり、 DD法®による定量分析が有効と考えられます。ここでは、複数の結晶多形を有する化合物の純物を測定し、その結果を用いて混合物の定量分析を行いました。
測定・解析例
結晶多形I型、II型、III型の純物およびそれらの混合物を無反射試料板に詰め、集中法によりX線回折測定しました。波長としてCu Kα線を用い、45 kV- 200 mAのX線管出力で、2θ = 3~40°を10 °/minで測定しました。
I型、II型、III型のX線回折プロファイルからd-Iリストを作成し、混合物のX線回折プロファイルをリートベルト法によりフィッティングした結果を図1に示します。2θ = 13.9°, 18.7°, 21.6°にI型のピークに起因する残差がみられました。このことから、I型は試料板内で配向していると考えられます。また、フィッティングの良さを示す指標であるRwpおよびS値はそれぞれ11.4%と6.16と算出されました。
配向を考慮するため、強度分解と測定プロファイルを用いる方法を組み合わせたDD法®による解析を行いました。混合物のX線回折プロファイルをDD法®によりフィッティングした結果を図2に示します。図1と比較して残差が減少し、RwpおよびS値はそれぞれ3.60%と2.09と算出されました。
以上、データベースに収載がなく、配向しやすい結晶相の定量分析には、リートベルト法よりもDD法®の方が適していることを示しました。
図1 混合物のリートベルト法によるフィッティング結果および定量分析結果
図2 混合物のDD法®によるフィッティング結果および定量分析結果
参考文献 (1) H. Toraya: Rigaku Journal (English version), 34(1) (2018) 3-8.
(2) H. Toraya: Rigaku Journal (English version), 35(2) (2019) 27-34.
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + ASCアタッチメント
+ 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250 - X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン
※「DD法」「Direct Derivation Method」「DD Method」は、株式会社リガクの商標または登録商標です。