DD法による結晶多形の定量分析

    Application Note B-XRD1142

    はじめに

    Direct DerivationDD)法では、各結晶相から散乱されるX線強度の総和と化学組成の情報を用いて定量分析を行います (1),(2)。医薬分野等においては、多くの化合物がデータベースに収載されていません。その場合、従来の手法では定量値の算出が困難であり、 DD法による定量分析が有効と考えられます。ここでは、複数の結晶多形を有する化合物の純物を測定し、その結果を用いて混合物の定量分析を行いました。

    測定・解析例

    結晶多形I型、II型、III型の純物およびそれらの混合物を無反射試料板に詰め、集中法によりX線回折測定しました。波長としてCu Kα線を用い、45 kV- 200 mAのX線管出力で、2θ = 3~40°を10 °/minで測定しました。

    I型、II型、III型のX線回折プロファイルからd-Iリストを作成し、混合物のX線回折プロファイルをリートベルト法によりフィッティングした結果を図1に示します。2θ = 13.9°, 18.7°, 21.6°にI型のピークに起因する残差がみられました。このことから、I型は試料板内で配向していると考えられます。また、フィッティングの良さを示す指標であるRwpおよびS値はそれぞれ11.4%と6.16と算出されました。

    配向を考慮するため、強度分解と測定プロファイルを用いる方法を組み合わせたDD法による解析を行いました。混合物のX線回折プロファイルをDD法によりフィッティングした結果を図2に示します。図1と比較して残差が減少し、RwpおよびS値はそれぞれ3.60%と2.09と算出されました。

    以上、データベースに収載がなく、配向しやすい結晶相の定量分析には、リートベルト法よりもDD法の方が適していることを示しました。

    混合物のリートベルト法によるフィッティング結果および定量分析結果

    図1 混合物のリートベルト法によるフィッティング結果および定量分析結果


    混合物のDD法によるフィッティング結果および定量分析結果

    図2 混合物のDD法によるフィッティング結果および定量分析結果

    参考文献    (1) H. Toraya: Rigaku Journal (English version), 34(1) (2018) 3-8.

        (2) H. Toraya: Rigaku Journal (English version), 35(2) (2019) 27-34.

    推奨装置・ソフトウェア

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + ASCアタッチメント
      + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン

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