微小部X線回折測定による 錠剤表面に付着した微小不純物の結晶相同定

    Application Note B-XRD1137

    はじめに

    医薬品は、一般的に有効成分(原薬)に賦形剤などを加えた製剤として、人に服用されます。最も身近な製剤は錠剤です。錠剤が打錠機によって生産される過程において、錠剤表面に色素が付着した場合、その成分を分析することによって、錠剤の変質や異物の混入経路を特定することができます。本測定では、模擬的に作製した錠剤の表面に付着した赤い色素の結晶相同定を行い、付着原因を推定しました。

    測定・解析例

    錠剤表面に付着した赤い色素の領域は、直径100~300 μm程度であるため、X線ビームを約100 μmに集光可能なCBO-μを使用しXRD測定を行いました。測定時には、錠剤全体像8.0 mm × 17.5 mmの範囲を装置内の試料観察カメラにて撮影し(図1左)、2.0 mm × 5.0 mmの特定範囲を0.2 mmピッチ、計100点の測定点(図1中央)にてXRDパターンを取得しました。得られたXRDパターンの多重書きをしたところ、数ヶ所の測定点について、2θ = 33.2 ̊ および35.6 ̊ に不純物由来と思われるピークが観測されました。定性分析を実施したところFe2O3(赤サビ)が同定されました(図2)。赤サビが観測された測定点を写真上に示します(図1右)。鉄由来の赤サビが観測されたため、打錠機に使用されている鉄部材からの混入であると推測できます。(1)

    試料観察カメラ画像

    図1 試料観察カメラ画像

    (左)錠剤の全体像 (中央)XRDの測定位置 (右)赤サビの観測位置


    各測定点におけるXRDパターンの多重書きと定性分析結果

    図2 各測定点におけるXRDパターンの多重書きと定性分析結果

    参考文献: (1) “高精度微小部分析・XYマッピング ~極小エリアを理想的に狙い撃ち~”, https://youtu.be/evdBEWTs7ZA.

    推奨装置・ソフトウェア

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 微小部測定光学ユニット CBO-µ
      + ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000

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