デスクトップX線回折装置による 医薬品原料の転移挙動の観察
Application Note
B-XRD1133
はじめに
DSC測定により、医薬品原料の脱水や結晶相転移の有無が確認できますが、どのような化合物に変化したのかは融点から推測するしかありません。In-situ(その場)測定によって、試料を加熱しながらX線回折測定をすると、加熱に伴う結晶構造変化を調べることができます。ここではデスクトップX線回折装置に温調アタッチメントを組み合わせ、乳糖(ラクトース)一水和物の転移挙動を調べました。
測定・解析例
乳糖一水和物のDSC測定の結果、145.5、170.0 °Cに吸熱ピーク、175.0 °Cに発熱ピークが融点以下で得られました(図1)。これらの吸発熱は脱水に伴う相転移であると推測されますが、どのような化合物になっているのかまではわかりません。図2にデスクトップX線回折装置による、乳糖一水和物のIn-situ測定の結果を示します。このようにX線回折プロファイルを俯瞰して見ることで、100 °C、150 °C、180 °Cでは異なるプロファイルが得られたことがわかります。各温度のX線回折プロファイルについて結晶相を同定すると、乳糖一水和物は、吸湿性α-乳糖(単斜晶系)、安定型α-乳糖(三斜晶系)へと変化することがわかりました(図3)。なお、この測定では試料を5 °C /minで昇温しながら、20 °/minでX線回折測定をしました。
図1 乳糖一水和物のDSCチャート
図2 デスクトップX線回折装置による乳糖一水和物のIn-situ測定の結果(プロファイルマップ表示)
図3 100 ˚C、150 ˚C、180 ˚Cで得られたプロファイルの結晶相同定結果
推奨装置・ソフトウェア
- デスクトップX線回折装置 MiniFlex + 温調アタッチメント BTS-500 + 高分解能1次元X線検出器 D/teX Ultra2
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Data Manager、Powder XRDプラグイン)