デスクトップX線回折装置を用いた 極微量の金属ナノ粒子の結晶子サイズ解析

Application Note B-XRD1072

はじめに

粒径をナノメートルオーダーまで小さくすると、比表面積の増大と同時に量子サイズ効果が生じ、バルクの状態では見られない新たな物性が現れます。金属ナノ粒子は融合過程中に多結晶体に成長することが多く、成長メカニズム解明や特性研究のためには粒径だけではなく結晶子サイズを調べる必要があります。結晶子サイズは、X線回折ピークの幅から算出できます。ここでは、極微量の金属ナノ粒子をデスクトップX線回折装置で測定し、結晶子サイズを解析した例を紹介します。

測定・解析例

金(Au)はナノ粒子として溶液中に分散した状態になると、Au粒子が特定の波長の光を吸収するプラズモン吸収が起こります。この現象を利用して古くからステンドグラスや高級ガラス食器などガラスの着色に利用されてきました。現在では光学センサーや有機エレクトロニクス、バイオセンサーなどに利用されています。

X線回折法による結晶子サイズの算出は、十分に大きな結晶子を持つ標準試料と被検試料のピーク幅の差分から、シェラーの式を用いて行います。図1に被検試料であるAuナノ粒子溶液を、無反射試料板の上に0.1 ml滴下し、乾燥させた試料を測定して得られたX線回折パターンを示します。

Auナノ粒子溶液(乾燥後)のX線回折パターン(NaClは緩衝溶液から析出した溶質物)

図1 Auナノ粒子溶液(乾燥後)のX線回折パターン(NaClは緩衝溶液から析出した溶質物)

 

ピークの積分幅からシェラーの式を用いて結晶子サイズを算出したところ、Au(111)に垂直な方向の結晶子の大きさは約8 nmであることがわかりました。以上のように、デスクトップX線回折装置を用いて、0.1 mlの極微量のサンプルからのX線回折ピークを観測し、高い精度で金属ナノ粒子の結晶子サイズ解析することが可能です。

推奨装置・ソフトウェア

  • デスクトップX線回折装置 MiniFlex + 高速1次元検出器 D/teX Ultra2

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