シェラー法による触媒材料の結晶子サイズ解析
Application Note
B-XRD1071
はじめに
シェラー法は、粉末試料の結晶子サイズを評価する代表的な手法です。シェラー法では結晶の歪による回折ピークの広がりを無視できると仮定し、回折ピークの格子面に垂直な方向の結晶子サイズがそのピークの半値幅と反比例するという関係から結晶子サイズを計算します。ここでは、ナノサイズの触媒材料のX線回折プロファイルを測定し、シェラー法を用いて結晶子サイズを評価しました。
測定・解析例
酸化セリウム(CeO2)は、排ガス浄化触媒の母材や透明電解質シートなどに利用される機能性酸化物ナノ粒子です。これらの性能はCeO2ナノ粒子の粒径や結晶子の大きさに依存するので、その大きさを評価することが重要になります。
X線回折法による結晶子サイズの算出は、十分に大きな結晶子を持つ標準試料を測定し、被検試料とのピーク幅の差分から、シェラーの式を用いて行います。図1に被検試料であるCeO2ナノ粒子(平均粒径10 nm)と、十分に大きな結晶子を持つ標準CeO2試料のX線回折パターンを示します。ピークの積分幅からシェラーの式を用いて結晶子サイズを算出したところ、(hkl)に 垂直な方向の結晶子の大きさが8.9~ 9.2 nmと算出されました(表1)。平均粒径とほぼ等しい数値が得られたことから、 このCeO2ナノ粒子は粒径と結晶子サイズがほぼ等しい単結晶体であることがわかりました。
図1 被検試料(上)と標準試料(下)のX線回折パターン
表1 CeO2の結晶子サイズ
(h k l) | 結晶子サイズ (mm) |
CeO₂ (1 1 1) | 9.08(4) |
CeO₂ (2 0 0) | 8.79(8) |
CeO₂ (2 2 0) | 9.16(5) |
CeO₂ (3 1 1) | 9.18(7) |
CeO₂ (2 2 2) | 9.1(2) |
CeO₂ (4 0 0) | 9.10(18) |
CeO₂ (3 3 1) | 8.88(14) |
CeO₂ (4 2 0) | 9.2(2) |
CeO₂ (4 2 2) | 8.98(14) |
CeO₂ (5 1 1) | 8.95(16) |
CeO₂ (4 4 0) | 9.1(3) |
CeO₂ (5 3 1) | 9.13(17) |
推奨装置・ソフトウェア
- デスクトップX線回折装置 MiniFlex + 高速1次元X線検出器 D/teX Ultra2