リートベルト法による医薬品共結晶の粉末結晶構造解析および不純物の定量分析

    Application Note B-XRD1035

    はじめに 

    結晶構造解析は単結晶を用いることが一般的ですが、結晶性の純物精製が難しい試料や、純物質が得られても結晶成長が難しい試料では、単結晶による結晶構造解析は困難となります。近年のパソコンの計算速度向上と解析ソフトウェアの飛躍的な発展、さらに粉末X線回折装置の精度の向上により、結晶性の純物質が得られれば、粉末試料からでも結晶構造解析を行うことが可能となりつつあります。ここでは不純物を含む共結晶の粉末試料の回折プロファイルから不純物の同定を行い、残った回折ピークを用いて、指数付け、構造決定、構造精密化を行った例を示します。

    測定・解析例

    フルフェナム酸・サリチル酸共結晶は、フルフェナム酸とサリチル酸を含む溶液から得られますが、単結晶構造解析を行えるサイズの単結晶の合成が困難で、サリチル酸のみが再結晶化した粉末(不純物)が含まれます。図1に、サリチル酸結晶が含まれる粉末試料の回折パターンからフルフェナム酸・サリチル酸共結晶の結晶構造を決定し、Rietveld法により結晶構造を精密化した結果を示します。解析の結果、共結晶は、フルフェナム酸とサリチル酸を1:1で含み、それぞれの分子がカルボン酸の水素結合で会合した構造であることが明らかになりました(図2)。また、合成した粉末には共結晶化しなかったサリチル酸結晶が約5.7 mass%含まれていたことがわかりました。

     サリチル酸およびフルフェナム酸・サリチル酸共結晶のX線回折パターン

    図1 サリチル酸およびフルフェナム酸・サリチル酸共結晶のX線回折パターン

     粉末結晶構造解析により得られた共結晶の結晶構造

    図2 粉末結晶構造解析により得られた共結晶の結晶構造

    参考文献:    小中 尚 ら : 日本薬学会第130年会, (2010), 29P-pm084. 
    試料ご提供 : 中外製薬株式会社 様

    推奨装置・ソフトウェア

    • 全自動水平型多目的 X 線回折装置 SmartLab + Kα1ユニット + CBO-E集光光学系 + 高速1次元X線検出器 D/teX Ultra 250
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)

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