湿度雰囲気下でのXRD-DSC同時測定による 水和物の脱水挙動の観察
Application Note
B-XRD1020
はじめに
医薬品や食品の原材料として、原薬、糖質、油脂などの結晶性物質が使われています。これら物質の結晶構造は熱や湿気によって変化することがあり、溶解性や食感などの性質が変わるため、製品の開発や品質管理において温度や湿度に対する原料の構造変化を把握する必要があります。X線回折と示差走査熱量分析の同時測定(XRD-DSC)では、温度と湿度に対する物質の吸発熱変化と結晶構造変化を同時に観察できます。ここでは糖質のひとつであるトレハロースについて、二通りの湿度雰囲気下でXRD-DSC測定を行いました。
測定・解析例
図1に、トレハロースニ水和物を乾燥雰囲気下で加熱した結果を示します。トレハロースニ水和物は85°C付近で脱水し、結晶性の悪い無水物および非晶質へと変化し、160°C付近の発熱反応を経て結晶性の良い無水物へと転移することがわかりました。
図2に、トレハロースニ水和物を高湿度雰囲気下(水蒸気分圧13kPa)で加熱した結果を示します。乾燥雰囲気下で出現した結晶性の悪い無水物や非晶質は見られず、ニ水和物から直接結晶性の良い無水物へと変化している様子が明らかになりました。
同じ化合物であっても、加熱時の湿度雰囲気によって、得られる結晶構造が異なることがXRD-DSC測定から明らかになりました。
図1 トレハロースニ水和物のXRD・DSC同時測定結果(乾燥雰囲気下)
図2 トレハロースニ水和物のXRD・DSC同時測定結果(高湿度雰囲気下)
推奨装置
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + X-ray DSC + 水蒸気発生装置 HUM
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE + X-ray DSC + 水蒸気発生装置 HUM