極点測定による圧延板の結晶方位解析

    Application Note B-XRD1014

    はじめに

    金属やセラミックスは、建築物や飛行機・自動車などをはじめとして、さまざまな分野で使用されており、その多くは多結晶からなります。多結晶材料は、製造・加工時の変形や熱履歴により、特定の結晶方位に集積します(集合組織)。その結晶方位が材料の熱的・電気的・機械的特性などに影響することから、材料の特性を制御する上で結晶方位の解析が重要です。X線回折法によって得られる極点図形からは材料中の結晶の方位がわかります。さらに、ODF(Crystallite Orientation Distribution Function)法による解析から、副方位を含めた結晶方位の体積分率を定量的に求めることができます。ここではCu圧延板の極点図形を作成し、結晶方位の体積分率を算出しました。

    測定・解析例

    結晶方位は{hkl}<uvw>と表現され、{hkl}は試料表面に平行な結晶面を表し、<uvw>は圧延方向と平行な方向を表します(1)。試料の結晶方位とその体積分率はDefocus補正(正極点図の外側ほど強度が減衰する現象を無配向試料で補正すること)を行った正しい極点図から求めることができ、ステレオ投影機能により結晶方位を決定、ODF法により副方位を含めた結晶方位の体積率を定量的に求めることができます。

    図1にCu圧延板から得られた極点図形を示します。Cu(220)を測定し得られた極点図形から、□(赤い四角)で示す{001}<010>結晶方位が存在することがわかりました。

    図2に示すようにCu(220)含め(111)、(200)などの複数の極点図からODF解析を行い、可能性の高い結晶方位の体積分率を算出し、結晶方位をODF断面と極点図上で確認しながら決定することができます。なお、可能性の高い結晶方位の体積分率はEuler角度幅、もしくはスケール因子から計算されます。


    Cu(220)の極点図形

    図1 Cu(220)の極点図形

    は{001}<010>結晶方位)



    ODF解析結果と体積分率算出結果 図2 ODF解析結果と体積分率算出結果

    参考文献: (1) 長尾 圭吾, 鏡 英理奈: リガクジャーナル, 41(2) (2010) 1-8.

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