サーマルペースト材料の熱伝導率測定
はじめに
サーマルペーストは、サーマルグリース、サーマルゲル、ヒートシンクペースト、ヒートシンク、ヒートシンクコンパウンドなど、さまざまな用語でも知られているサーマルインターフェース材料(TIM:Thermal Interface Material)です。TIMは、電気機器の熱伝導インターフェースを改善するのに役立ち、優れたサーマルペーストは、長い信頼性の高いパフォーマンスとともに、低ボンドライン、低熱抵抗、高熱伝導率の特性を有します。TIMの樹脂成分はバインダーとしても作用し、粉末状のフィラーなどを結着する役割も果たしています。バインダーの性質によってTIMの種類は放熱シート、ギャップフィラー、グリス、接着剤、PCM、両面テープなど多岐にわたりますが、ペースト状の材料の熱伝導率の直接測定は難しく、ある一定の形状の成形が必須の測定法は不得手となります。また、測定法に合わせてペースト材以外の介在物との組み合わせも必要になり、正確な熱伝導率を測定する大きな阻害因子となっています。そのため、測定に際して特別な前処理も不要な簡便かつ短時間で測定が可能であることが、ペーストの測定に適していることになります。TRIDENTのMTPSセンサーは、ペースト状の材料を前処理の必要なく、そのままセンサー面に直接設置、測定することが可能な特徴を有するため非常に強力な熱伝導率測定手法です。
測定・解析例
・測定サンプル:市販のシリコーン系サーマルジョイントコンパウンド
・使用装置:熱伝導率測定装置 C-Therm TRIDENT/MTPSセンサー
・測定方法:以下の2種類のサンプルに対する前処理後の測定結果を比較してみました。
測定法① ペースト状サンプルを10μmの高分子フィルム膜に包んでセンサー表面に設置(ペースト材以外の介在物との組み合わせ)
測定法② ペースト状サンプルをMTPSセンサー表面に直接設置(ペースト材のみで、他の介在物なし)。
サンプルの前処理の違いによる2つの測定方法により得られた
結果を上記の表にまとめました。
測定法①では、MTPSセンサーはペースト材には直接接触されずにポリマーラッピングフィルムを介して設置されます。
この場合、例え10μmの高分子フィルム膜の介在でさえも、測定結果に大きく影響を及ぼし、測定法②のペースト材の直接設置に比べ、明らかに低い熱伝導率の値が算出されております。また、ペースト材をラッピングする際には、ラッピング表面にしわができ易く、測定再現性も悪化することも分かりました。
高熱伝導性を有するペースト状の材料の熱伝導率を正確に測定するためには、センサー表面にペースト材以外の介在物を必要としない測定法の選択が重要となります。
推奨装置・推奨ソフトウェア
- 熱伝導率測定装置 C-Therm TRIDENT