MLCCの酸素欠陥評価
はじめに
積層セラミックコンデンサ(MLCC)は携帯電話をはじめとする多くのエレクトロニクス機器に搭載されています。今後も5G通信機器、電気自動車をはじめとする新たな市場での需要が予想され、薄層化・多層化による小型化・大容量のトレンドは続くと思われます。これらの高性能化と併せてMLCCの寿命についても保証する必要があり、寿命を設計する上で重要な酸素欠陥の挙動やその量を調べることが不可欠です。ここでは熱刺激電流(Thermally Stimulated Current, TSC)測定による酸素欠陥の評価方法を紹介します。
測定・解析例
市販のMLCCについて、強誘電体相の自発分極の影響を受けない130℃で70Vを任意の時間(10~600min)印加して試料を分極します。その後5℃/minで昇温し、TSCを観測しました。[1][2]
図1に任意の電圧印加時間のTSC測定結果を示しました。150℃付近と230℃付近に2つのピーク、ピークαとβが確認されました。ピークαは電圧印加時間に寄らず一定である一方、ピークβは印加時間増加に伴い、大きくなる傾向が見られました。この温度域は強誘電体相の自発分極の影響は無視できるため、これらのピークは酸素欠陥のマイグレーション挙動に起因していると考えられます。ピークαは結晶粒界内で移動した酸素欠陥、ピークβは粒界を越えて移動した酸素欠陥と推測され、印加時間増加に伴って粒界を超えて移動する酸素欠陥の量が増えていると考えられます。またピークβとリーク電流には相関があることが報告されており、酸素欠陥が粒界を超えて電極界面まで移動することで、界面での電位障壁が低下し、絶縁劣化につながると考えられます。
図1 130℃にて70Vを任意時間印加した際のMLCCのTSC
参考文献:[1] 竹岡伸介, マテリアルライフ学会誌, 17(1) (2005) 12-16. [2] S. Takeoka, K. Morita, Y. Mizuno, H. Kishi, Ferroelectrics, 356(1) (2007) 78-84.
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TS-POLAR、TS-FETT