PVCの可塑剤の影響

Application Note B-TA3002

はじめに

熱刺激電流(Thermally Stimulated Current, TSC)は高分子の分子運動による微少な変化との相関が認められており、高分子緩和現象の評価に広く応用されています。ここではポリ塩化ビニル(PVC)及び可塑剤としてフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)を30%添加したPVC試料についてTSCを用いて評価した結果を紹介します。

測定・解析例

PVCフィルム試料を60℃(DEHP添加は30℃)で30min,1MV/mの条件で分極し、これを-180℃まで冷却後に10℃/minで昇温してTSCを観測しました。両試料にて0℃以上に比較的大きなTSCピークが確認されており、これらの温度域がPVCのガラス転移温度に近いことから、主鎖のミクロブラウン運動に起因するα緩和過程由来のピークであると考えられます。DEHPなしのPVCでは73.6℃にピークが確認された一方で、DEHPありでは28.4℃まで低温側にシフトしました。部分昇温法を用いてα緩和過程由来のピーク付近の温度範囲のTSCを取り出し、initial rise法から活性化エネルギーを計算するとDEHPなしが274kJmol-1、DEHPありが188kJmol-1となり、可塑化効果によるα緩和の活性化エネルギーの低下が見られています。
また-100~-50℃の局所的な運動に起因しているβ緩和過程由来のピークはDEHP添加により消失しました。DEHPがその双極子相互作用によってPVC鎖に2次的に結合し、PVC鎖の局所的分子運動を抑制すると考えられます。

DEHP添加なし及びありのPVCのTSC

図1 DEHP添加なし及びありのPVCのTSC

参考文献
1) 太田善規, 家田正之, 電気学会論文誌 A, 104, 269 (1984).
2) 金城徳幸, 中川鶴太郎, 材料, 22, 462-465 (1973)

 

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