TG-FTIRを用いたバイオマスプラスチックの評価
はじめに
植物由来(バイオマス)から作られたプラスチック、いわゆる「バイオマスプラスチック」は石油由来のプラスチックと組成・物性がほぼ同様であり、これを一定の割合で石油由来の樹脂に含めたものが製品として利用されている。また、一般的にバイオマスプラスチックと石油由来の製品の識別は、C13の同位体C14の存在量でしか判断できないとも考えられている。今回は市販レジ袋で使用されるポリエチレン製バイオマスプラスチックとバイオマスが含まれていない試薬の高密度ポリエチレンをTG-FTIRにて比較測定し、その評価を行った。
測定・解析例
試料は、Scientific Polymer Products社製の高密度ポリエチレン(HDPE)ならびにバイオマス配合比の異なる3種類(25%、30%、50%)の市販レジ袋、それぞれ約5mgをそのまま使用した。測定雰囲気ガスは、不活性窒素ガスならびに酸化性空気ガスを用い、200mL/minの流量にマスフローメータで設定し、室温~600℃を20℃/minの条件で測定した。TGA-IRモジュール部の保持温度は、300℃に設定し、発生ガスの導入経路での凝縮を防止した。
図1は、異なるバイオマス配合比 (25%、30%、50%)からなる3種の市販のレジ袋とHDPE試薬における窒素ガスならびに酸化性(空気)雰囲気中での TG (DTG) 曲線の比較を示している。窒素ガスフロー中のTG-FTIRからの重量減少と発生ガス(IRスペクトル)からの分解挙動は同一であり、バイオマス配合比に起因するサンプル間の違いは識別困難であった。他方、同様のサンプルに対する酸化性(空気)雰囲気の比較からは、何れのサンプルも220℃付近より第一次の酸化分解から始まっている。その後、一定の分解過程を経て、360~450℃付近で燃焼に伴う2段目の急激な重量減少に続き、バイオマス配合サンプルでは、500℃付近にかけてさらに3段目の激しい酸化燃焼が起こっている。HDPEとバイオマス配合サンプル間では、明らかに分解挙動も異なっている。バイオマス配合比を増加するに従って、2段目の分解開始温度は徐々に高温側にシフトし、バイオマス配合比間の違いも明確に識別できた。
図1 異なるバイオマス比率 (25%、30%、50%)からなる3種のレジ袋とHDPE試薬に対する窒素雰囲気フロー中(a)と空気雰囲気フロー中(b)から得られたTG (TG微分:DTG) 曲線の比較
図2 異なるバイオマス比率 (25%、30%、50%)からなる3種のレジ袋とHDPE試薬に対して大気中で得られたグラム-シュミット曲線とCO、CO2、炭化水素のケミグラム曲線の比較
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TG-DTA8122およびThermo Scientific™ Nicolet™ iS20またはiS50とTGA-IRモジュール
- Thermo plus EVO2及びOMNIC™ソフトウェア