生分解性プラスチックの発生ガス分析
はじめに
生分解性プラスチックとは、微生物によって最終的に水やCO2に分解され自然に還るプラスチックです。一般的なプラスチックごみのように焼却処理する必要が無いので環境への負荷が少なくて済みます。また、バイオマスプラスチックとは生物由来の再生可能な有機資源を原料として作られたプラスチックのことをいいます。従来のプラスチックは焼却時のCO2発生が問題となっていますが、バイオマスプラスチックは原料となる植物が光合成を行う事でCO2を吸収するので、CO2の削減になることからカーボンニュートラルであるといえます。この生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックのどちらにも当てはまるプラスチックとしてPolyhydroxyalkanoate(PHA) やPolylactic acid(PLA)が知られていますが、PHAの一種にPolyhydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate(PHBHHx)があります。PHBHHxは植物油を原料として微生物により生産されたプラスチックで、ストロー、カトラリー、食品包装材などに利用されています。今回はこのPHBHHxついて発生ガス分析を行いました。
測定・解析例
市販のPHBHHx製ストローを約1mgとり、TG-DTA/GC-MSにて測定しました。He雰囲気で室温~500℃まで20℃/minで昇温し、イオン化法はEI法で測定しました。図2にTG-DTAとTIC結果を示します。
300℃付近でPHBHHxの分解がみられ、図3に300℃での発生ガスのマススペクトルを示します。このマススペクトルについて定性を行ったところ、主な発生ガスとしてCrotonic acid が確認されました(図4)。また、Crotonic acid のマススペクトルを差し引いたマススペクトルにて再検索したところHexenoic acidの発生が確認されています(図5)。
図1 PHBHHxの構造
図2 TG-DTAとTIC
図3 300℃でのマススペクトル
図4 301℃でのNISTライブラリ検索結果(Crotonic acid)
図5 301℃でのNISTライブラリ検索結果(Hexenoic acid)
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TG-DTA8122およびMASS-IF、GC/MS
- Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア