ABS樹脂の分解 ~ダイナミックTGとTG-GCMSモード~
Application Note
B-TA2030
はじめに
ABS樹脂はアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを共重合した熱可塑性樹脂で、加工性に優れ、耐衝撃性や機械的強度もあり、美しい質感も有するため汎用性の高いプラスチック材料です。ABSのような共重合体の場合は加熱時に複雑な分解ガスの発生が予想され、通常のTG-MS測定ではガスの詳細な定性までは困難です。そこでダイナミックTGとTG-GCMSモードを融合させることで反応の進行状況に応じた減量率毎の分解ガスの定性を行いました。
測定・解析例
ABS樹脂をHe雰囲気にて300~600℃の範囲で等反応速度制御(CRC)法にてダイナミックTG測定を実施しました。設定減量速度は0.6wt%/minで行い、結果を図1に示します。CRC法では減量速度を一定になるように試料温度を変化させて測定するため、減量率毎の発生ガスの捕集が容易になり、連続して起こる反応を分離できる可能性があります。今回は減量率が(1)10±1wt%、(2)50±1wt%の範囲で発生ガスを捕集し、TG-GCMSモードにて定性を行いました(図2)。図2に示したように(1)10±1wt%ではABSのモノマーであるアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンとトルエン、ブタジエンダイマーが確認されました。一方で(2)50±1wt%ではブタジエン由来の発生ガスがほとんど検出されませんでした。今回の結果からブタジエンはABS分解初期段階で放出されていることが分かります。
図1 ABS CRC法でのTG測定結果
図2 ABS TG-GCMSモードの測定結果
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TG-DTA8122および1ch MS-IF、GC/MS
- Thermo plus EVO2ソフトウェア