酢酸セルロースの熱分析
はじめに
酢酸セルロースは植物由来のセルロースを酢酸エステル化したポリマーです。昔からある素材の一つですが、最近ではバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックとして注目されている材料でもあります。難燃性や耐薬品性に優れており、フィルム、カーテン地、織物、塗料などの用途があります。
今回は酢酸セルロースについてDSCとTG-DTA/GCMSで測定し、その熱挙動を調べました。
測定・解析例
・DSC測定
酢酸セルロースについて-50℃~250℃まで10℃/minでサイクル測定を行いました。結果を図1に示します。1st heatingでは120℃までに脱水による吸熱ピークが見られた後、200℃付近から融解と思われる吸熱ピークが見られます。Coolingでは210℃に結晶化による発熱ピークが見られた後、ガラス転移によるベースラインのシフトが見られ、2nd heatingでは180℃にガラス転移によるベースラインのシフトと220℃にcooling過程で結晶化した部分の融解による吸熱ピークが見られます。サイクル測定を行うことで酢酸セルロースのガラス転移は180℃付近であることがわかります。
・TG-DTA/GCMS測定
酢酸セルロース約1mgをHe雰囲気で室温~450℃まで20℃/minで昇温し、イオン化法はEIにて測定しました。図2に3Dプロファイル、図3にTG-DTAおよびMSイオンサーモグラムを示します。TG-DTAの結果では300~400℃で分解による約90%の減量がみられました。図4に373℃でのライブラリ検索結果を示します。MS結果より減量時の主な発生ガスは酢酸であることがわかりました。
図1 DSC結果
図2 3Dプロファイル
図3 TG-DTAおよびMSイオンサーモグラム
図4 NISTライブラリ検索結果
推奨装置・推奨ソフトウェア
- DSCvesta、TG-DTA8122および1ch MS-IF、GC/MS、 Thermo Mass Photo
- Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア