塩ビ代替材料の試料観察TG-MS 測定
Application Note
B-TA2022
はじめに
ポリ塩化ビニル(PVC)は焼却の際にダイオキシンをはじめとする塩素を含む有害な物質が発生する可能性があります。また軟質のPVCには可塑剤のフタル酸エステルが含まれることが多く、環境面及び人体への影響が懸念されています。一部のフタル酸エステルはRoHS指令の禁止物質に指定されています。そのため各メーカーではPVCの使用規制及び代替素材使用を推進する動きがあります。ここではPVCフリーの消しゴム(一般的な消しゴムはフタル酸エステルを含むPVCを原料としている)の加熱挙動を試料観察TG-MSにて調べました。
測定・解析例
PVCフリーの消しゴムを切り出して試料容器にセットし、He雰囲気で室温~560℃の範囲で5℃/minにて昇温しました。MSのイオン化には電子イオン化(EI)を使用しました。TG曲線、発生ガス(m/z)の温度プロファイル、そして各温度における観察像を図1に示します。100~300℃に18%程度の減量があり、試料が収縮していく様子が見られました。脂肪族炭化水素と思われるマスパターンを確認され、軟化や加工性向上のためのパラフィンオイルが添加されている可能性が高いです。さらに昇温すると350~500℃に21%程度の減量が見られ、褐色→黒色へと試料が変色しました。この減量に対応してスチレン(m/z104)が発生しており、他にもブタジエンなど様々な有機ガスが発生している可能性があります。これらの分解ガスからスチレン-ブタジエンゴム(SBR)が原料として使用されていることが示唆されました。
図1 PVCフリー消しゴム加熱時のTG曲線、MSイオンサーモグラム(各m/zの括弧内は倍率)、試料観察像
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TG-DTA8122/Cおよび1ch MS-IF、GC/MS
- Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア