PPSの分解・燃焼-試料観察TG-MSによる評価-
Application Note
B-TA2013
はじめに
PPS(ポリフェニレンサルファイド)はスーパーエンジニアリングプラスチックの一つであり、非常に高い耐熱性、機械的強度を有しています。そのため金属代替のプラスチック材料の筆頭候補として近年その需要が増しています。ここではPPSの熱安定性を評価するために、試料観察TG-MSを用いてその加熱挙動を確認しました。
測定・解析例
PPS粉末を不活性のHe雰囲気または酸化性の20%O2/He雰囲気で室温~800℃の範囲で20℃/minにて昇温しました。MSのイオン化には電子イオン化(EI)または光イオン化(PI)を使用しました。EIは主に無機系のガスを、PIは有機系のガスの検出、定性に使用しました。
ここではPPS加熱時の減量初期段階、500℃付近の挙動に注目します。この温度域では両雰囲気で減量が進行し、試料が変色して炭化が進行していること、また発泡しながらガス発生している様子が確認できました。そして酸化性雰囲気では発熱ピークが確認でき、燃焼が起きていることがわかりました。
この温度域のマススペクトルを確認すると、不活性雰囲気ではPPSに起因するベンゼン環、硫黄を含む分解ガスのシグナルが確認できました。一方で酸化性雰囲気ではこれらの分解ガスの一部のみが検出され、代わりにCO2やSO2の顕著な増加が見られました。酸化性雰囲気では分解によって発生したガス(特に末端に-SHを有する化合物)が即座に燃焼していると考えられます。
図1 不活性、酸化性雰囲気でPPSを加熱した際の (a)TG-DTAと(b)500℃付近の観察像とマススペクトル
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TG-DTA8122/Cおよび1ch MS-IF、GC/MS
- Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア