タバコのTG-MS その2
はじめに
タバコから発生する揮発成分や分解ガスは健康被害を考える上でその分析が強く要望されます。一方でタバコ製品化過程で生成するタバコ茎部分など大量の廃棄物をバイオマス資源として活用するにあたり、その熱分解過程を詳しく調べる必要があります。そこでTG-DTA/GC-MSを用いて、異なるタバコから発生するガス成分量の違いを調べました。
測定・解析例
市販のタバコ3種(A、B、C)を5㎎用意し、He雰囲気で室温~600℃まで20℃/minで昇温しました。MSのイオン化には光イオン化(PI)を使用しました。
各試料のニコチン(m/z162)、ヒドロキシメチルフルフラール(m/z126)、ヒドロキノン(m/z110)の発生ガスプロファイルを図1に示しました。タバコの依存性をもたらすニコチンは200℃手前で発生のピークがあり、その発生量はB、Cに比べてAが少ないことが分かります。糖の分解により生成するヒドロキシメチルフルフラールはニコチンよりも若干高温側で発生し、C < A < B の順で発生量が増えます。(320℃付近のピークは別の発生ガスに起因していると推測されます。)セルロース、リグニンの分解生成物と推測されるヒドロキノンは300℃付近に発生ピークがあり、試料間に大きな差がないことが分かりました。
このようにMSの測定結果は発生ガスの定性に加えて、TGの減量だけでは判別しづらい試料間の比較を行うことができます。また今回のようにPIや化学イオン化(CI)といった分子量に対応するイオンを確認しやすいソフトイオン化を使用することで、フラグメントイオンの影響でマススペクトルが複雑になりやすい電子イオン化(EI)よりも発生ガスの試料間比較を行いやすい場合があります。
図1 各市販タバコの発生ガス温度プロファイル、(a) ニコチン(m/z162)、(b) ヒドロキシメチル
フルフラール(m/z126)、(c) ヒドロキノン(m/z110)
推奨装置・推奨ソフトウェア
- 試料観察TG-DTA8122および1ch MS-IF、GCMS
- Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア