繊維の吸湿特性
はじめに
繊維の吸湿特性は衣料品における汗の吸いやすさや蒸れにくさなどを評価するための一つの指標となります。今回は調湿された雰囲気でTG-DTA測定が可能なHUM-TG-DTAを用いて、服やタオルなどに利用される繊維である、絹、木綿、ナイロンについて、温度30℃でdry~90%RHまで湿度を変化させたときの重量変化率(吸湿率)から、各湿度下での吸湿特性を比較しました。
測定・解析例
試料は市販されている糸を長さ4mm程度に切り、試料量5mgにて測定を行いました。絹糸のHUM-TG-DTA測定結果を図1に示します。温度は30℃に保持し、湿度をdry、20%RH、40%RH、60%RH、80%RHと段階的に変化させた時の重量変化を測定しました。測定結果では湿度が高くなるにつれ、吸湿による増量が見られています。なお、各湿度変化において、湿度dry→20%RHでは2.9%の増量、湿度20→40%RH、40→60%RHではそれぞれ1.8%の増量、湿度60→80%RHでは2.3%の増量が見られ、増量率は湿度の上昇幅に対し一定でないことがわかります。そこで湿度を2.5%RHずつ段階的に変化させた測定を行い、相対湿度に対しdryからの重量変化率(吸湿率)をプロットした結果を図2に示します。また同様の測定を木綿、ナイロンについても行い、絹と同様にプロットし比較を行いました。
図1. 測定結果(絹糸)
図2. 相対湿度に対する重量変化率
図2において絹の湿度に対する重量変化率を見ると、20%RH以下の低湿度域では、低湿度ほど湿度変化に対する増量率が大きくなっています。その後、20%RH~60%RH程度の中湿度域では、ほぼ直線的に増量しています。また、60%RH以上の高湿度域では、湿度増加に従い増量率は大きくなっており、湿度域によって吸湿特性に違いがあることがわかります。
材質の違いについて比較すると、絹と木綿においては湿度20%RHまでは同程度の増量が見られますが、20%RH以上では絹の方が増量率が大きいことがわかります。またナイロンにおいては絹や木綿に比べあまり吸湿しないことがわかります。
HUM-TG-DTAではこのような湿度に対する材料の吸湿特性について比較することが可能となります。今回の結果から、下着のように汗などを吸湿させたい衣料品の場合には絹や木綿のように吸湿率の高い材料を利用することで、吸湿率の小さいナイロンに比べ蒸れを防ぐことができると考えられます。
このようにHUM-TG-DTAを用いることで、材料の湿度に対する吸湿特性を把握することができ、目的に適した材料の選定に利用できます。
推奨装置・推奨ソフトウェア
- Thermo plus EVO2 TG-DTA8122
- 水蒸気発生装置 HUM-1
- Thermo plus EVO2測定・解析ソフトウェア