試料観察TG-DTAによるオイルの熱分析
はじめに
TG-DTA測定中における試料画像を観察できる試料観察TG-DTAは様々な材料の特性評価に利用されています。測定中における試料の色、形状、体積の変化を画像によって把握できることで、試料の見た目とTG-DTA測定結果の関係性や加熱されることによる試料の変化を視覚的に把握できます。
レッドパームオイルは、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸からなるトリアシルグリセロールを主成分とする植物油で、食品業界、美容製品、バイオ燃料で広く使用されています。このアプリケーションでは、レッドパームオイルの熱挙動を試料観察TG-DTAを用いて評価しました。
測定・解析例
試料観察TG-DTA測定では5mgのレッドパームオイルを空気雰囲気下にて、10℃/minで600℃まで昇温しました。
レッドパームオイルの試料観察TG-DTA測定結果を下図に示します。41℃付近に油の融解による吸熱ピークが見られており、半固相から液相への物理的な変化が画像で確認できます。200℃以降、複数の発熱ピークを伴う段階的な減量が観測されていますが、減量初期段階で試料の色は一旦透明に変色(218℃の画像)する様子が画像からわかります。これは自動酸化現象などの熱的事象が考えられ、試料画像を見ることで試料の熱的変化を明らかにしています。その後、300℃を超えると試料は酸化分解によって黄褐色へ変色していき、400℃までに試料は炭化により黒色に変化しています。その後、炭化物の燃焼が見られ、600℃で試料はすべて分解しています。
試料観察TG-DTAを用いることで色の変化と熱挙動を結び付けた考察が簡単に行えるようになり、今回のような分解初期段階の試料の特徴的な挙動についても観察画像から知ることが可能になります。
試料観察TG-DTAのレッドパームオイルの測定結果
参照文献: (1) S. Vecchio Ciprioti et. al.: Eur. J. Lipid Sci. Technol., 118 (201), 1-16
推奨装置・推奨ソフトウェア
- Thermo plus EVO2 試料観察TG-DTA
- Thermo plus EVO2 測定ソフトウェア・解析ソフトウェア