TG-DTA及びDSCによるカフェインの熱挙動
はじめに
DSCは試料のガラス転移、相転移、結晶化及び融解などの反応温度、反応エネルギー量を調べる際によく使われます。一方、DSCでは装置の構造上、試料からガスが発生した場合、発生するガス種によってはDSCのセンサーが損傷する可能性があります。また、目的の熱挙動を見る際に、脱水や昇華、蒸発を抑えた上での熱挙動を把握しなければならない場合は密封(シール)容器を使用する必要が生じます。このため、未知試料の熱挙動をDSCで測定する場合は、予めTG-DTAで試料の熱挙動を確認し、その結果からDSC測定を行う際の温度条件や容器の選定を行うことが望ましい手段となります。ここでは、カフェインについてTG-DTA測定を行い、その結果をもとにDSC測定を行いました。
測定・解析例
図はカフェインのTG-DTA及びDSC測定結果の多重プロットとなります。TG-DTA測定では、アルミニウム製開放容器にて、20℃/minの昇温速度で300℃まで昇温しました。TG-DTA測定結果では163℃、236℃及び281℃に吸熱ピークが見られ、150℃付近から300℃までに試料がほぼ100%減量しており、160℃で相転移、その後、昇華、融解、蒸発反応が起こっていることが示唆されます。このような場合、開放容器でDSCにて測定を行うと、融解ピークのエネルギーを定量しても試料重量は融解時に変化してしまっているため正確なエネルギー量(単位重量当たり)を求められないことがわかります。このような場合、DSC測定では昇華、蒸発反応を抑えるためにアルミニウム製密封(シール)容器を用いて測定行うことが有効です。DSCの測定結果では融解による吸熱ピークのみが237℃に見られ、DTAで見られるような融解ピーク前後の昇華、蒸発による吸熱ピークは確認されておらず、昇華、蒸発は抑えられていることがわかります。このようにシール容器を用いることで融解反応を正確に測定でき、反応のエネルギー量を定量することが可能となります。なお、密封容器を使用する際は容器の耐圧に注意する必要があります。
図 カフェインのTG-DTA及びDSC測定結果の多重プロット
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