カフェインのメカノケミカル効果
はじめに
ボールミル粉砕や自由研削などの試料調整用の機械的粉砕法は、医薬品など様々な材料で使用されています。 しかし、試料に機械的なエネルギーを与えることによって医薬品の熱挙動に大きな影響を与える可能性があります。本アプリケーションではカフェインについてDSC測定を行い、メカノケミカル効果について比較しました。カフェインは鎮痛薬などにも配合されており、フォームⅡ(またはβ)及びフォームⅠ(またはα)の二つの多形が存在し、常温常圧ではフォームⅡが、高温ではフォームⅠが安定形であることが知られています。
測定・解析例
無水カフェインを乳鉢で約3分間粉砕した試料(粉砕後)と粉砕せずにそのまま測定した試料(未粉砕)についてDSC測定を行い比較しました。測定は試料量3mgにてアルミのシールパンを使用し、静止雰囲気下で10℃/minの昇温速度で270℃まで昇温しました。未粉砕の無水カフェインでは測定結果は160℃付近にフォームⅡからフォームⅠへの相転移による吸熱ピークが見られ、さらに237℃にフォームⅠの融解による吸熱ピークが観測されます。粉砕後の無水カフェインでは237℃の融解ピークは同様に見られますが、相転移温度は152℃付近と未粉砕に比べ低温に見られています。この結果から、粉砕などの機械的な前処理がカフェインの熱挙動に影響を及ぼすことが示唆されます。
図 1 粉砕有無の無水カフェインのDSC測定結果
参照文献
(1): S. Pinto and P. Diogo. J. Chem. Thermodynamics 38 (2006) 1515-1522
(2): A. A. L. Michalchuk, I. A. Tumanov and E. V. Boldyreva. J. Mater Sci 53 (2018) 13380-13389
推奨装置・推奨ソフトウェア
- Thermo plus EVO2 DSCvesta
- Thermo plus EVO2ソフトウェア