BioSAXS を用いた X 線小角散乱法による タンパク質の溶液構造解析例
Application Note
B-SCX2004
はじめに
超分子複合体や揺らぎの大きい領域を持つマルチドメインタンパク質は、その機能の重要性から、構造・機能相関解析が注目を集めています。しかし、超分子複合体やマルチドメインタンパク質は、一般的には結晶化が非常に困難です。結晶構造解析が困難なタンパク質の全体構造や、活性状態の構造を解析する手法として、X線小角散乱法によるタンパク質の構造決定、いわゆるBioSAXSの需要が高まっています。
測定・解析例
タンパク質溶液の散乱強度から緩衝液の散乱強度を差し引くことにより、タンパク質由来の散乱強度を算出することができます。このタンパク質の散乱強度を用いて、プログラムパッケージATSAS(1) (EMBL)のビーズモデリング法(2)により溶液構造の決定を行いました。以下に、BioSAXSの広範な測定能力を示す例として、短時間での測定、低分子量ペプチドホルモンの測定、巨大タンパク質複合体の測定・溶液構造解析を示します。
図 散乱強度曲線(上)と溶液構造(下)
(a) リゾチーム:露光時間15分での測定例
(b) インスリン:分子量5.8kDaのペプチドホルモン測定例
(c) 20S プロテアソーム:分子量750kDaの巨大プロテアーゼ複合体の測定例
BioSAXSでは溶液状態で測定を行うため、結晶を必要としない、生体条件に近い状態や活性状態での測定・解析ができるなどの特徴を持っています。
参考文献: (1) M. V. Petoukhov et al.: J. Appl. Cryst., 40 (2007) s223-s228.
(2) D. I. Svergun, et al.: Biophys. J., 80 (2001) 2946-2953.
推奨装置
- タンパク質溶液用X線小角散乱装置 BioSAXS-2000nano
- 高輝度X線発生装置 MicroMax007HFMR
- 超高輝度X線発生装置 FR-X