HyPix-Arc150°で可能となったペプチド医薬(環状ペプチド)の高速測定
はじめに
中分子薬は、低分子薬と抗体医薬等のバイオ医薬の中間に位置する、ペプチド結合をもつ約0.5 - 5.0 kDa程度の新たな医薬品で、低分子薬と抗体医薬等のバイオ医薬が持つ問題点を解決できる可能性を秘めています。中でも、環状ペプチド医薬品は、ポスト抗体医薬として期待されている“次世代医薬品”です。環状ペプチド薬のような高分子量化合物の結晶でも、超高輝度X線発生装置、当社独自開発による湾曲光子計数型ハイブリッドピクセル検出器 HyPix-Arc150°、単結晶構造解析統合プラットフォーム CrysAlisPro による最適化された測定スケジュールを組み合わせることにより、従来にはない高速・高精度解析が実現します。
測定・解析例
HyPix-6000HEは極めて低いノイズ、高計数率、高い空間分解能と、優れた特徴を持つ検出器ですが、最短カメラ長を採用した際の最大検出角度は50°程度となります。したがってCu線源を用いた測定では、通常低角側と高角側を分けて測定する必要があります。HyPix-Arc150°では、3つのモジュールを湾曲型に配置する事により、最大検出角度は150°程度となっています。このため低角から高角までのデータをより短時間で収集することができるようになりました。このため極微小結晶など、X線による損傷を受けやすい結晶でも、損傷が進行する前にデータ収集を終了することが可能となります。
環状ペプチド薬の一つ“シクロスポリンA”の微小結晶(図1)の、測定・構造解析結果を示します(図2、表1)。このような微小な結晶でも、HyPix-Arc150°を用いることで、わずか2時間ほどで測定が終了した結果、構造を得ることができました。絶対構造の妥当性を示すFlackパラメーターが0に近く標準不確かさも小さいことから、絶対構造も判定できていることがわかります。
図1 シクロスポリンAの微小結晶
図2 シクロスポリンAの構造
表1 シクロスポリンA結晶の構造解析結果
推奨装置・ソフトウェア
- 単結晶X線構造解析装置 XtaLAB Synergy
- 湾曲光子計数型ハイブリッドピクセル検出器 HyPix-Arc150º
- 単結晶構造解析統合プラットフォーム CrysAlisPro