HPC 検出器のシャッターレスモードによる 超高速測定
はじめに
単結晶構造解析装置に用いる検出器の進歩は、1980年代はシンチレーションカウンター(SC)やマルチワイヤー、1990年代前半からはイメージングプレート(IP)やCCDでした。2010年代初頭に従来型検出器の利点を併せ持つ、光子計数型ハイブリッド(HPC)検出器が登場しました。この検出器は広いダイナミックレンジと高感度・高速読み出しにより、誤差の原因ともなるフレーム毎のシャッター開閉を伴わない、シャッターレスモードによる連続測定が可能です。当社独自開発による光子計数型ハイブリッドピクセル検出器 HyPix-6000HEは、各ピクセルに2系統のカウンター回路を持っているため、2つのカウンターを交互に使うゼロデッドタイムモードによる測定も可能です。ここでは試料としてテトラシアノエチレン(TCE)、スクロース、シチジンを用いた、高輝度X線源PhotonJet-RとHyPix-6000HEによる高速測定例を紹介します。
測定・解析例
結晶を適切な大きさに成形したのち、少量のグリスを用いてMicroMount LD(MiTeGen)にマウントし、Synergy-Rに取り付けました。データ測定用ソフトウェアCrysAlisProの予備測定モード、”Pre-experiment”により得られた条件をそのまま用いて測定しました。
表1に解析結果を示します。対称性の高いTCEでは48秒、比較的対称性の低いシチジンでも30秒で全データ測定が完了しました。スクロースはさらに対称性が低いうえに、絶対構造の判定も視野に入れたため、9分12秒かかりました。
従来のSC検出器は1反射毎の測定であったため、測定時間は単純に測定すべき反射数に比例して長くなっていました。CCD検出器では1フレーム毎のシャッター開閉や、飽和したフレームの再測定、5秒を超える露光時間ではデジンガー測定が必要でした。またIP検出器では1枚のフレームの読み出しに60秒ほどかかっていたことを考え合わせると、HPC検出器の登場により、いかに飛躍的に短い測定時間での構造解析が可能となっているかがわかります。
表1 TCE、シチジン、スクロースの高速測定のまとめ
試料 | TCE | シチジン | スクロース |
構造 | |||
全測定時間 | 48秒 | 30秒 | 9分12秒 |
X線源 | MoKα | MoKα | CuKα |
空間群 | I m-3 | P 212121 | P 21 |
R1値 | 4.42% | 3.37% | 2.75% |
Flackパラメーター | N/A | N/A | 0.02(12) |
推奨装置・ソフトウェア
- 単結晶X線構造解析装置 XtaLAB Synergy-R / DW
- 光子計数型ハイブリッドピクセル検出器 HyPix-6000HE
- 構造解析プログラムパッケージ Olex2 + 自動構造解析プラグイン AutoChem