巨大ねじれ芳香族化合物の解析例
はじめに
ピロール環を5つ以上有するポルフィリン類縁体を環拡張ポルフィリンといい、ポルフィリンとは異なる様々な興味深い性質を有することがわかっています。例えば、ポルフィリンが平面構造を有するのに対し、環拡張ポルフィリンは非常に柔軟な構造のため、NHの水素結合を利用しながらねじれ構造をとることがあります。環のサイズが大きくなるにつれその構造の柔軟性が増すため、巨大ねじれ化合物は構造の予測が難しく、精確な構造を明らかにするためには単結晶X線構造解析が必要となります。しかしながら、そのような巨大ねじれ芳香族化合物の解析は一般に非常に困難であり、ピロール環の数が10以上の巨大芳香族化合物の構造解析の例はほとんどありませんでした。
測定・解析例
図1にサンプルの構造式、図2に測定した回折イメージを示します。図2に示すようにCu線源での測定においては、十分な分解能を得るために、高角側・低角側の広範囲なデータを収集する必要があります。XtaLAB Synergyシリーズは、結晶の取り付け方位や回折対称を考慮した、効率の良い測定スケジュールを構築するためのStrategy機能を有しており、最適な条件での測定を容易に行うことができます。また、Shutterless modeを搭載していますので、従来型の蓄積型検出器では避けられないシャッターの開閉や、データの読み取りにおける時間のロスやノイズがないため、高速かつ正確な測定を実現しています。
図1 巨大芳香族化合物の構造式
図2 回折イメージ(a:低角側イメージ, b:高角側イメージ)
図3には、構造解析に成功した巨大ねじれ芳香族化合物の分子構造と結晶学データを示します。
図3 巨大ねじれ芳香族化合物の分子構造
(母体骨格を明確にするため、ペンタフルオロフェニル基は表示していません。)
参考文献: Yasuo Tanaka, Ji-Young Shin, and Atsuhiro Osuka: Eur. J. Org. Chem. (2008) 1341–1349.
推奨装置
- XtaLAB Synergyシリーズ