熱伝導率測定のアプリケーション(マスク編)
はじめに
新型コロナウイルスの感染防止の基本であるマスクの着用が引き続き求められています。ただ、夏の暑さの中マスクを着用するのには不快感が伴います。そこで暑い時期にマスクを付ける時に少しでも快適に過ごせるように、冷感マスクなど付け心地をよくする工夫がされてきております。
冷感という観点では、最大熱流速や熱伝導率といった値で評価することも一つの方法として可能です。 ※
今回、熱伝導率値として、各マスクの性能について比較してみました。
測定対象は洗濯をして繰り返し使用できるマスクを4種類測定。
※「接触冷感向上に関する要因解析」 杉山 儀、池上大輔、藤田浩文 あいち産業科学技術総合センター研究報告2014
測定をしたマスクの特徴
Aマスク 表生地: ポリエステル ,ポリウレタン ,キュプラ
裏生地: ナイロン ,キュプラ ,ポリウレタン
フィルター: ポリプロピレン
※測定面は裏地。理由は肌に接触する部分の為。
Bマスク 生地:ポリエステル、 ポリウレタン
※裏表は一緒
Cマスク 生地: (本体)ポリエステル
※裏表は一緒
Dマスク 生地:綿
※裏表は一緒
各マスク(A・B・C・Dメーカ)の熱伝導率値の比較
各マスク(A・B・C・Dメーカ)の熱伝導率値の比較結果
【結果】
熱伝導率として以下の順位になった。
Aマスク > Bマスク > Cマスク > Dマスク
【考察】
- Aマスクは、評判通り熱伝導率の値が高い。その他、特徴としてキュプラを使用しおり、吸湿・吸水性が良い繊維といわれている為、蒸れにくいとう特徴もある。複数の繊維を織り込んでいるので、工夫されている。裏地の素材合繊は、一般的に使用されている女性用インナーシャツと同じ素材合繊である。
- BマスクとCマスクはわずかな違いは、差として約0.005W/mKであった。
- Dマスクは最下位の結果。
本比較評価を通じて、マスクの一つの特性として、見かけの熱伝導率値の評価が指標となるものと思われる。これらの値は、繊維素材そのものを評価しているのではなく、素材と空気層そして生地の編み方に、測定値が大きく依存しているものと考えられる。
参考数値
-
各材料の熱伝導率 W/mK
綿 0.54
ナイロン 0.38
ポリウレタン 0.3
ポリエステル 0.20
キュプラ(ベンベルグ) ?
空気 0.02
何故、綿素材の熱伝導率が一番高いのに、マスクとして測定すると、一番値が悪くなるのか?
【予測】
マスク本来の目的が、細菌や花粉などをカットするために、不織布という独特の編み方をしている。
綿マスクの編み方は不明であるが、おそらく編み方により空気層が増えてしまい、その影響で、値が低くなってしまうと思われる。
JIS L 1927 で接触冷感を評価する方法が規定参考までに数値を記します。
- 最大熱流束 W/cm2
ナイロン 0.3~0.35
ポリエステル 0.3~0.35
キュプラ 0.3~0.35
加工綿 0.3
ポリウレタン ?
熱伝導率との相関は、明確でないため参考値としてください。
Aマスク(裏地 ナイロン+キュプラ+ポリウレタン)
過重 | 100 | 250 | 500 | 750 | 1000 |
Aマスク W/mK | 0.0656 | 0.0703 | 0.0756 | 0.0795 |
0.0831 |
Bマスク(ポリエステル+ポリウレタン)測定
過重 | 100 | 250 | 500 | 750 | 1000 |
Bマスク W/mK | 0.0622 | 0.0643 | 0.0664 | 0.0678 |
0.0691 |
Cマスク(ポリエステル)測定
過重 | 100 | 250 | 500 | 750 | 1000 |
Cマスク W/mK | 0.0570 | 0.0589 | 0.0610 | 0.0631 |
0.0645 |
Dマスク(綿)測定
過重 | 100 | 250 | 500 | 750 | 1000 |
Dマスク W/mK | 0.0481 | 0.0504 | 0.0519 | 0.0532 |
0.0540 |