積層セラミックコンデンサの3軸応力解析

アプリケーションノート B-XRD3007

はじめに

積層セラミックコンデンサ(MLCC)では、誘電体であるチタン酸バリウムと内部電極であるNiによる層構造が形成されています。Niとチタン酸バリウムは熱膨張係数が異なるため、MLCCの焼成後に内部応力が発生することが知られています。近年、MLCCの小型化・大容量化に伴い、チタン酸バリウムの層がより薄くなり、積層数が増加したことで残留応力が発生しやすい構造となっています。MLCCの外装部は内部電極積層部を保護し、残留応力を緩和・分散する重要な役割を担うため、その残留応力を評価することは機械的信頼性やクラック発生・進展挙動を理解する上で重要です。さらに、MLCCの小型化により、従来の汎用機での微小部光学系では要求される照射サイズにX線を集光することが難しい場合があり、さらに、その照射位置と回転軸の交差精度が問題になることがあります。今回、φ 20 μmのX線照射径と、10 μm以下の回転軸交差精度を有した微小部X線回折装置 DicifferX Microarea Edition を用いて、MLCCの3軸応力解析を行いました。

測定・解析例

試料は、内部電極Niと誘電体(チタン酸バリウム)の層構造が見えるように切断し、断面に外部電極が含まれない面をZ方向、外部電極が含まれる面をY方向としました(図1)。その後、研磨を行い、次にイオンミリング装置で琢磨を行いました。

B-XRD3007_Fig1_JP図1:MLCCの構造と測定した断面方向

Z方向の試料について、内装部(Ni内部電極とチタン酸バリウムの層構造部)を覆う、チタン酸バリウムのみで形成される外装部の角部と辺部の2か所の測定を行いました(図2参照)。通常、3軸応力解析を行う場合は、面内回転軸(φ軸)を45°ずつ回転させ、各φ位置でψを3~4点測定します(表1)。Z方向の試料はあおり軸(χ軸)を使用してψを変化させる側傾法で測定を行いました。X線は試料表面に対し斜めに入射され(入射角ω)、さらに側傾法ではχ軸が駆動するため、照射幅が直角入射時よりもさらに広がります。ここで、外装部の幅は100 μmのため、10 μmコリメータを使用し、直角入射でφ 20 μmになる条件で測定しました。得られたデバイリングを分割し(図3)、各分割位置のψ、φの値と2θピークサーチ結果から、垂直応力σ₁₁、σ₂₂の他にせん断応力σ₁₂、σ₁₃、σ₂₃を求めることができます。図2に3軸応力の解析結果を示します。角部と辺部のσ₁₂にせん断応力が観測され、その応力値は角部のほうが高いことがわかりました。また、せん断応力がゼロになる主応力の計算も可能です(図4)。

B-XRD3007_Fig2_JP図2:MLCCの断面(Z方向)の測定箇所と3軸応力解析結果

 

表1:3軸応力解析用測定時のφとψ位置(例)B-XRD3007_Table1

B-XRD3007_Fig3_JP図3:2次元回折像とデバイリングの分割

 

B-XRD3007_Fig4_JP_v2図4:角部の主応力の解析結果

次に、Y方向の試料について、外装部の赤丸で示した5か所を測定しました(図5)。Y方向の試料は入射角ωでψを変化させる並傾法で測定しました。DicifferX Microarea Editionではω軸をプラス側に動かしてψを変える”プラスψ”での並傾法が可能です。このプラスψでの並傾法は、側傾法に比べて試料上での照射幅の広がりを抑えて測定することができます。

その結果、5か所の残留応力値は明確な差異が観測されました。内部電極の末端から遠い箇所にある位置1と2では、せん断応力はほとんど観測されておらず、σ₁₂は高い圧縮応力を示しました。試料3と4はσ₂₂において高い引張応力が観測され、位置1、2に比べて高いせん断応力σ₁₂が観測されました。この原因として、位置3と4は、内部電極終端部と外部電極の間に挟まれた領域であり、この2つの拘束差によって応力方向が変化し、結果としてせん断応力が増大したと考えられます。位置5については外部電極から30 μmと非常に近い位置にあり、外部電極の収縮による熱応力の影響、さらに内部電極終端部での応力変化の影響も加わり、その結果、せん断応力が高く観測されたと考えられます。

このように、20 μmのX線照射径と高い軸交差精度により、チタン酸バリウムとニッケル内部電極層にはX線を照射せず、外装部のみに照射することで、正確な残留応力評価が可能になりました。

B-XRD3007_Fig5_JP図5:MLCCの断面(Y方向)の測定箇所と3軸応力解析結果

推奨装置・ソフトウェア

  • 微小部X線回折装置 DicifferX Microarea Edition
  • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Stress, DataVisualizationプラグイン)

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