アプリケーションノート B-XRD2037
はじめに
Si基板は半導体デバイスの主要基板として広く用いられますが、基板表面に0.5~2 nm程度の自然酸化膜が形成されやすい特徴があります。この膜は欠陥や不純物を含み[1]、結晶欠陥増加や高抵抗化などのデバイス特性低下を招きます。特に大口径基板では、これらの影響がより顕著なため、表面酸化の抑制と管理が重要な課題となります。本アプリノートでは大口径基板の測定が可能な先端研究向け高精度薄膜評価用X線回折装置TFXRD Labを用いて300 mm Si基板上自然酸化膜の膜厚、密度、表面粗さの分布を非破壊で評価した例を紹介します。
測定・解析例
300 mm Si基板上自然酸化膜の膜厚分布をX線反射率法(以下XRR)にて評価しました。図1に基板中心部について、自然酸化膜をSiO₂と仮定した層構造モデルによるプロファイルフィッティング結果と算出された膜厚、密度、粗さを示します。
得られた測定プロファイルは、薄膜に由来するフリンジが明瞭に観測されました。この測定プロファイルは理論プロファイルと概ね一致しており、プロファイルフィッティングの結果、膜厚は0.745 nmと非常に薄く、表面粗さも0.303 nmと小さい値を示しました。また密度は1.388 g/cm3と算出され、SiO₂の理論値と比較して小さいため、欠陥や不純物が含まれる粗密な構造の膜であることが考えられます。
図 1 プロファイルフィッティング結果
さらに、基板面内における自然酸化膜の分布を把握するため面内XRRマッピング測定を実施し、その結果をカラーマップとして図2に示します。この結果より、膜厚と粗さは中心からノッチ方向に向かって値が小さくなっており、密度は基板外周が比較的小さいことがわかりました。この結果を用いて膜厚と粗さの相関を評価したところ、膜厚1 nm程度までは膜厚の増加に伴い粗さが大きくなっていますが、1 nm以上では粗さが一定になることが確認されました。
これは1nm前後の薄い膜厚では、Si基板表面粗さや欠陥による局所的な酸化反応速度の違いが表面粗さに大きく反映されます[2,3]。一方で臨界膜厚付近では、空気中の酸素は膜内拡散による基板と膜界面での成長が支配的になるため、粗さの増加が停滞することが推測されます。
以上のようにTFXRD Labを用いてXRRマッピング測定を実施することで大口径基板上の1 nm以下の薄膜の面内分布を評価することが可能です。
図 2 自然酸化膜の面内分布評価、および膜厚と粗さの関係
参考文献:
- [1] Biegelsen, D. K., Stutzmann, M., Johnson, N. M., and Poindexter, E. H.,“Identification of Pb centers at the Si/SiO₂ interface,”Applied Physics Letters, 38, 948–950 (1981).
- [2] X. Chen and J. M. Gibson, “Roughness at Si/SiO₂ Interfaces and Silicon Oxidation,” Journal of Vacuum Science & Technology A, 17, 1269–1274 (1999).
- [3] L. Lai and E. A. Irene, “Limiting Si/SiO₂ Interface Roughness Resulting from Thermal Oxidation,” Journal of Applied Physics, 86, 1729–1735 (1999).
推奨装置・ソフトウェア
- 先端研究向け高精度薄膜評価用X線回折装置 TFXRD Lab
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (XRR、Data Visualizationプラグイン)