透過X線回折測定によるラミネートセルの 正極材と負極材の同時オペランド測定
Application Note
B-XRD1123
はじめに
リチウムイオン電池は、他の二次電池と比較しエネルギー密度が高く小型化・軽量化が容易なことから、ノートパソコンや携帯電話などの携帯機器の電源として広く普及しています。その電池の評価にはX線回折法が頻繁に利用されますが、中でも充放電過程における電池内の正極材や負極材の結晶構造変化をその場で観測するオペランド測定は、反応の進捗や機序、構造の変化、劣化等を明らかにできる有用なツールです。Mo線源を使用した透過X線回折測定では、製品に近いラミネートセルの正極材・負極材の結晶構造変化を同時に捉えることが可能です。
測定・解析例
透過力の高いMo線源を用いて、正極材にNMC(Li(Ni,Mn,Co)O2)、負極材にグラファイト(C)を使用したラミネートセルの透過X線回折測定を行いました。図1に測定の概要図を示します。
図2に、ラミネートセルの充放電(充放電レート:0.1C = 7.0mA/g))を行いながら観測した (a) X線回折プロファイル(全体)、(b) 正極材・負極材の回折ピーク付近のプロファイルマップ、および(c) 電圧・電流グラフを示します。充放電中のNMCの格子定数変化に伴う回折ピーク位置の変化とグラファイトのステージ構造の変化を同時に観測することができました。
図1 ラミネートセルのオペランド透過X線回折測定
図2 ラミネートセルのオペランドX線回折測定結果
(a) 透過X線回折プロファイル (b)プロファイルマップ (c) 電圧・電流グラフ
参考文献 : K.Ishidzu, Y. Oka, T. Nakamura : Solid State Ionics 288 (2016), 176-179.
試料ご提供 : 株式会社東レリサーチセンター 様
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + Mo管球 + CBO-E集光光学系 + ラミネートセルアタッチメント
- 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250 HE
- ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000 HE
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Data Managerプラグイン)