試料速度制御TGによる蛇紋石鉱物中の蛇紋石含有率の半定量評価

アプリケーションノート B-TA1080

はじめに

蛇紋岩は蛇紋石鉱物を主成分とする含水鉱物岩であり、加熱に伴って結合水(OH)や吸着水が段階的に放出されるため、TG-DTA測定では特徴的な質量減少と吸発熱反応が観測できます。特に蛇紋石はおよそ500~650℃の温度域において主要な脱水反応を示すことが知られており、この温度域の質量減少は試料中の蛇紋石の含有量に強く依存します。

本アプリケーションでは、質量減少曲線から得られる温度領域別の質量減少率を解析し、蛇紋石の理論脱水率(文献値)との比較に基づいて蛇紋岩中の蛇紋石含有率を半定量的に見積もりました。あわせて、副成分に起因する質量減少段階についても整理し、測定結果の解釈とともに考察します。なお、本手法は「当該温度域における質量減少の主要因が蛇紋石の脱水反応である」ことを前提として解析しました。

測定・解析例

試料には蛇紋岩粉末を用い、大気雰囲気下にて、測定を行いました。TG-DTA測定は昇温速度5℃/min、試料速度制御TG(SCTG)測定は一定の質量減少速度0.06%/hに設定し、それぞれ室温から1000℃まで実施しました。

B-TA1080_図 1 SCTGとTG-DTA測定結果の比較 図 1 SCTGとTG-DTA測定結果の比較

SCTG曲線から、室温~900℃の間で合計12.27%の質量減少が確認されました。質量減少挙動は複数の温度域に明確に分離され、それぞれ異なる脱水反応に起因すると考えられます。

表 1 SCTG測定における温度域別質量減少率と帰属推定反応

減量段階 温度範囲(℃) 減量率(%) 主な反応 推定成分
1 室温–200 0.96 吸着水の脱離 表面水分
2 200–500 0.59 結晶水の脱水 ブルース石(約2%)
3 500–620 6.67 主脱水反応 蛇紋石
4 620–650 2.30 後期脱水反応 蛇紋石
5 650–900 1.75 残留OH・副反応 微量蛇紋石・炭酸塩等

蛇紋石の脱水は、代表的には Mg₃Si₂O₅(OH)₄ →Mg₂SiO₄ +MgSiO₃ +2H₂O と表され、SCTGで観測される理論質量減少率は生成する2H₂Oに相当する質量比から見積もりました。

500~650℃の温度域における脱水量は8.97%であり、蛇紋石の理論質量減少率(理論脱水率、約13%)と比較すると、試料中の蛇紋石含有率はおよそ65~70%と見積もられます。また、200~500℃に観測された0.59%の質量減少はブルース石の脱水反応に対応し、その含有率は約2%と推定されます。残余成分は主として無水鉱物相であると考えられます。

以上により、SCTG測定により得られた段階的な脱水反応量を用いることで、蛇紋岩中の蛇紋石含有率を半定量的に評価できることが示されました。本手法はXRDなどの固相分析と組み合わせることで、より信頼性の高い鉱物組成評価に有効です。

お問い合わせ

製品選びから据付後の技術サービスまで、何でもお気軽にお問い合わせください。