異方性材料(紙)の熱伝導率測定
はじめに
紙の原料は特殊な場合を除いて針葉樹又は広葉樹のパルプであり、パルプ化から抄紙、塗工などの後加工に至る製紙技術によって千差万別の性質を持った紙が造られます。紙はパルプ繊維の集合体です。繊維の懸濁液からの脱水濾過によって繊維は集合し重なり合って濾層を形造っており、続く濾層からの強制脱水に伴い繊維はシート平面に平行に配向し、異方性をもつ多層のネットワーク構造を形成しています。紙の熱伝導率の測定は、加熱により水分の蒸発が起こり定常状態を得難い点も大きな課題です。水分自体は熱伝導率を高める方向に働くため、簡便かつ短時間で測定が可能であることが紙の測定に適していることになります。1)
TRIDENTのMTPSセンサーを用いて、紙の測定面を変えることで、熱伝導率の異方性を測定してみました。
測定・解析例
・測定サンプル:市販の紙の名刺(100枚)
・使用装置:熱伝導率測定装置 TRIDENT/MTPSセンサー
・測定方法:名刺を100枚重ね合わせることで、MTPSセンサーによる測定サイズの最小径であるφ18mmを確保し、センサー面に対して厚み・縦・横の3方向にサンプル測定面を変化させることで、名刺(紙)の熱伝導率の異方性測定を行い、各面の熱伝導率を比較してみました。
測定結果より面方向XとYの熱伝導率は、測定再現性の精度内で一致した値を得ました。そこで、厚み方向の熱伝導率をλz、面方向をλxyとし、異方性の合成熱伝導率λxyzを以下の計算式で算出しました。
λxyz = √(λxy * λz)
λxy:面方向の熱伝導率、λz:厚さ方向の熱伝導率、λxyz:λxyとλzを合成した熱伝導率
紙の厚さ方向と面方向の熱伝導率は明らかに異なり、面方向では多層のネットワーク構造を形成することでより高い値を示しております。
参考文献
(1). 永井弘一,電子写真学会誌,28(1),61(1989).
推奨装置・推奨ソフトウェア
- 熱伝導率測定装置 TRIDENT
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