熱分析豆知識
第49回 TG測定をおこなう天秤の種類
TG(Thermogravimetry:熱重量測定)は試料を加熱または冷却したときに試料の質量変化を連続的に測定する方法です。その変化を測定するために使用されている天秤の機構には、下記のように非差動型・差動型が存在しますが、現在では昇温ドリフト(温度上昇に伴う見かけの重量変化)が小さい差動型TGが主流となっています。差動型には垂直型と水平(横)型があり、それぞれに異なる強み弱みを持っています。
水平型は試料を置く位置が安定した机上と近いため、外部環境による振動(例:装置周辺を人が歩く)に強いです。また、雰囲気ガスや分解ガスの流れる方向と重量変化を検出する方向が直行するためガス流量が比較的多い場合も正確に測定することが可能で、試料観察などのアタッチメントも取り付けることができます。ただし、Au(金)のように温度変化によって粒状になり試料容器内で試料が動いてしまうような場合、試料移動があると重量変化がなくてもTGが変化してしまうことがあります。
一方で垂直型は、試料ホルダーが天秤に対して垂直に向いているため、試料移動があったとしてもTGへの影響は受けにくい構造となります。ただし、試料を置く位置が試料ホルダーの先端となるため振動に弱く、雰囲気ガスや分解ガスが流れる方向と重量変化の検出方向が同一となるためガス流量を大きくするとTGが影響を受ける可能性があります。また、天秤機構部分に試料容器を設置する際に容器にゴミが入り込んでしまう可能性もあります。 各天秤構造それぞれに強みと弱みがありますが、強みをより強く、弱みは改善するために各社さまざまな工夫、技術を用いてそれぞれの天秤の測定精度向上や課題解決に取り組んでいます!
装置購入の際には、どのような試料を、どういった条件で、どう測定したいのかを考えたうえで、適当な性能を備えた装置をご検討ください。TG装置をお探しの際には、天秤の機構も考慮していただけると幸いです。
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