熱分析豆知識
第40回 試料観察熱分析
TG-DTAやDSCに試料観察用のCCDカメラを付属して、TG-DTA、DSCと同時に各温度での 画像を取り込むことが可能なシステムが利用されています。
たとえば、DSCやDTAに吸熱ピークが現れた場合、そのピークが転移によるものか、融解によるものか判断がつかない時があります。その場合、融解であれば試料形状・流動性の変化が現れ、色も透明に変化するケースが多くなりますが、転移の場合はエネルギー変化のみで試料形状が変化しないことが考えられます。
融解後のサンプルの冷却過程で結晶化が起こる場合には、発熱ピークに伴い透明な状態から不透明(白色)に変化します。昇温過程で起こる結晶化(冷結晶化)の場合も同様です。
また、透明や白色のポリマーが温度上昇に伴い色が黄色に変化する現象(黄変)についても、色の変化を確認することが可能です。
TG-DTAでポリマーなどの分解を測定した結果において、分解に伴いDTAに連続したノイズ状の小さなピークが現れることがあります。この温度域の試料観察画像を見ると、サンプルの粘性が下がり流動しながら発泡する状態が見られ、この連続したノイズ状のピークはサンプルの発泡によることがわかりました。
セラミックスの焼結や、無機化合物粉末の焼成による体積収縮変化も形状変化として捉えることができ、容器内サンプルの径方向については長さの計測も可能です。
非晶質のガラスサンプルについては、ガラス転移は比熱が変化するためDTAやDSCで検出できますが、軟化や流動はエネルギー変化を伴わないためDTAやDSCでは検出が困難です。試料観察画像からは、形状変化や流動状態を確認することが可能です。
このように試料観察熱分析を使用することにより、TG(質量変化)、DTA・DSC(エネルギー変化) では検出することができない挙動についても、色・形状の変化などから、有用な情報を得ることが可能となります。
製品情報
TG-DTA8122
DSCvesta2
DSCvesta
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