熱分析豆知識

 

第37回 熱分析の較正用標準物質(1)

使用している装置の測定結果の正確さを確認する必要がある場合、較正用の標準物質を測定し、その測定値と文献値を比較することにより評価できます。
TG-DTAの場合、TGについては質量(重量)変化量、DTAでは温度、DSCの場合は温度・エネルギー、TMAの場合は膨張量(膨張係数)と温度について確認します。

TGの質量(重量)変化量については、以下のように行います:
1.シュウ酸カルシウム一水和物試薬の脱水(100℃~200℃)に伴う減量を測定し、化学量論的な変化量(12.31%)と比較します。
2.炭酸カルシウム試薬の脱炭酸(500℃~800℃)に伴う減量を測定し、化学量論的な変化量(43.97%)と比較します。

DTAの温度、DSCの温度・エネルギーについて、室温以上の温度範囲では、高純度金属(99.99%以上)の融解温度(融点)と融解エネルギーを測定し、文献値と比較します。
代表的な金属としては、In(156.6℃)、Sn(231.9℃)、Pb(327.5℃)、Zn(419.5℃)、Al(660.4℃)、Au(1064.4℃) などがあります。
室温以下から-90℃付近までの温度範囲については、Cyclohexaneの転移(-86.7℃)と融解(6.7℃)の各吸熱ピークが利用可能です。なお、Cyclohexaneは、室温で液体なので、測定にはAl製シール容器を使用します。

TMAの場合は、膨張率や膨張係数が既知のサンプルを測定し、その文献値と比較します。
一般的には、高純度金属やセラミックスのロッド・ブロックなどが使用されます。
温度に関しては、DTAやDSCの温度確認に使用する高純度金属のシートを利用し、融解による変形(つぶれ)温度から確認可能です。

なお、測定される温度については測定雰囲気や昇温速度、試料容器の形状などによって変動する可能性があるため、サンプル測定と同一の測定条件で測定と確認を行う必要があります。

製品情報
TG-DTA8122
DSCvesta2
DSCvesta
DSC8231
TMA8311

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