熱分析豆知識

 

第47回 試料容器の選択と試料の詰め方

TG-DTA、DSCでは、通常、サンプルを特定の試料容器(パン)に入れて測定します。一般的に測定温度範囲が500℃以下であればAl(アルミニウム)製、500℃以上であればPt(白金)製を使用しますが、容器材質であるAlやPtとサンプルあるいは反応生成物との反応性が予測される場合には、Al2O3(アルミナ)製やSiO2(石英)製試料容器を選択します。
常にAl2O3製やSiO2製試料容器を使用すればいいのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、Al2O3やSiO2のような熱伝導率の低い材質の容器を使用するとDTAやDSCのピークがブロードになる、感度が低下するといった現象が起きることがあります。実際にAl2O3製容器とPt製容器でInを測定したDSC結果を図に示しました。比較すると、Pt製容器での測定結果の方がピークハイトが高く、シャープなピークになっていることが確認できます。
微小なピークを見逃さないためにも反応性等の問題がない場合は熱伝導率の良い材質であるAl製やPt製の容器を使用しましょう!

img47_01

また、繰り返し使用するPt製容器の底面状態は気にされていますか?試料容器底面が平滑でないと疑似ピークが現れる、感度が低下するといった現象が起きることがあります。底面が平滑でない場合は金属性の棒(付属の試料容器成形治具 下図「A」)などで容器を調整すると、容器底面とセンサー部との熱的接触が良くなり測定精度が向上する可能性があります。

img47_02
img47_03

この金属性の棒は粉末試料を薄く均一に容器底面に密着させる際にも使用でき、試料と容器底面の接触をよくすることが可能です。ただし、医薬品のような有機化合物で加えられた機械的な力により試料の結晶性や物理的性質が変化する場合や分解反応の測定で充填密度の影響を受ける場合などは、金属性の棒の使用により測定結果が変化してしまう可能性があるため注意してください。
ふんわりとした粉末試料を測定する場合や試料量を稼ぎたい場合にはこの金属性の棒がとても役立ちます!

今回は取り上げませんでしたが、開放型容器やクリンプ容器の違いやシール容器に関しては熱分析豆知識第41回や弊社ホームページにて詳細な情報を記載しております。ご興味がございましたら、ぜひご覧ください。

製品情報
試料容器

本記事または熱分析一般に関するご質問やお問い合わせ
E-mail:netsu@rigaku.co.jp

お問合せ

製品選びから据付後の技術サービスまで、何でもお気軽にお問合せください。