熱分析豆知識

 

第48回 補正や較正を行う順番は決まっているの? 

熱分析の測定データにブランク補正や温度・エネルギー較正を行い、解析を行うことも多いのではないでしょうか。複数の処理を行う場合、その順番は決まっているのか、順番が違うとどのような影響があるのか気になったことはありませんか? 

ブランク補正や温度・エネルギー較正は、装置原理や装置構造、また装置の経年劣化などから生じる測定結果の誤差を正しい値にするための手段となります。ブランク補正は、装置由来の変化(ドリフト)を測定し、測定試料の測定データからドリフトを差し引きます。試料の変化量が小さくドリフトが誤差の要因として影響する場合に効果的です。 

また、温度・エネルギー較正では融解温度や転移温度、またはそのエネルギー値が既知の物質を測定し、文献値と測定結果の差分から装置の出力値を正しい値に較正します。特に温度は熱電対の経年劣化に影響を受けるため、定期的に較正を行うことが望ましくなります。 

さて、ブランク補正と温度・エネルギー較正の両方を行う場合、その順序はどちらが先の方が良いのでしょうか?この場合はブランク補正を行ってから較正を行うという順番が理想的です。ブランク補正は温度に対してドリフト量を差し引くため、先に測定データを温度較正してしまうと、測定データの温度がブランクデータの温度と異なってしまい正しいドリフト量を差し引けなくなるためです。 

ドリフト量や較正値が小さい場合は順序が逆になっても大きな影響はありませんので、今まで逆の手順で行っていたとしても大きな影響はないと思いますが、原理的には、「ブランク補正」してから「較正」と覚えておいてください。 

なお、リガクの解析ソフトウェアは、解析後のデータに較正や補正を行う仕様になっていませんので、一度解析結果をリセットして生データに戻した上で行っていただく形になります。「較正と補正は解析の前に」と覚えてくださいね。 

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