熱分析豆知識
第45回 DSCでガスが生じる反応を測定しない方がいい理由は?
一般的なDSCは融解やガラス転移、結晶化など物理的な変化を主な測定対象としており、分解などガスが生じる反応の測定は推奨されていませんが、その理由はご存知でしょうか。
DSCは温度差を測定するDTAと異なり、試料を加熱または冷却したときに生じる反応に伴う吸発熱量を再現性よく定量的に検出する手法になります。DSCの感熱板は感度を向上させるため、温度変化に対して得られる信号が大きい銅の合金素材を薄く加工したものが用いられることが多いのですが、この合金は腐食性のガスに弱いため、試料が分解した際に発生するガスと反応してしまい感熱板は腐食してボロボロになってしまいます。感熱板が腐食してしまうと測定精度や感度の低下が生じますので、長期間安定して装置を使用するためにはガスが生じる反応の測定は控えていただくのがよいです。
また、測定中の試料が発泡などで感熱板に付着してしまった際、炉体を昇温できる最高温度が700℃程度とTG-DTAと比較して低いため、試料の焼き飛ばしが難しい場合があります。反応性が未知な試料は事前にTG-DTAで測定をして、分解反応や発泡が起きない温度条件を掴んだ上でDSCでの測定を実施すると炉体交換の頻度を抑えることに繋がります。
長期間安定した状態で装置を使用するために、少しずつ装置理解を深めていきましょう!
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