熱分析豆知識
第32回 昇温開始直後にベースラインが吸熱側にシフトするのはどうして?
DSC測定において、サンプル側に測定試料を入れた容器、レファレンス(基準試料)側に空容器をセットして測定した場合に、昇温開始直後にベースラインが吸熱側にシフト(階段状の変化)したことはありませんか。
DSC測定では、サンプル側とレファレンス側に熱容量(比熱容量×質量)差がある場合、昇温速度が変化する間は熱容量差に応じたベースラインのシフトが発生します。前述のケースでは、サンプル側の熱容量が大きいためベースラインが吸熱側にシフトしたと考えられます。
このような場合には、レファレンス側容器にα-アルミナ粉末、Alプレート等を入れることにより熱容量差を小さくすることができ、結果的にベースラインシフト量が小さくなってベースラインとピークなどの判断が容易になります。なおheatingとcoolingの連続測定においてheatingで吸熱側にシフトした場合、coolingでは発熱側へのシフトとなって現れます。
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