等方性ポリマーフィルムの熱伝導率測定
アプリケーションノート
B-TA4021
はじめに
電子産業やパワーエレクトロニクス分野においては、金属製の放熱部品間の接着に用いられる高分子系放熱材料(放熱シート)の熱伝導性を飛躍的に向上させることが急務となっている。ポリイミド(PI)は優れた機械的強度・耐熱性・絶縁性などを有するスーパーエンプラの一種であり、半導体デバイス内の絶縁膜や表面保護膜に広く使われている。一般に、有機系の高分子物質は加工性に優れた良絶縁体であるため、金属やセラミックスに比して熱伝導性が1~3桁低い(0.1~0.55 W/mK)。また、非晶性高分子の一軸延伸により、熱伝導率に大きな異方性が生じることも知られている。TRIDENT/TPS Flexセンサーを用いた薄膜ユーティリティは、等方性薄膜フォルム測定に適した手法である。そこで本アプリケーションでは,放熱シートや層間絶縁膜において重要性の高い高分子フィルムの熱伝導性に着目し、PI膜の熱伝導率測定テクニックの一例を紹介する。
測定・解析例
- 測定試料:膜厚の異なる3種類のポリイミド、カプトン®フィルム(25 μm, 55 μm, 225 μm)
-
使用装置:熱伝導率測定装置 TRIDENT/TPS Flexセンサー(薄膜ユーティリティ)
- フィルムの最小膜厚10 µm、最大積層厚 50 µm~350 µm、
熱伝導率値< 5 W/mK (through-plane)

- サンプルの準備:フィルムサンプルを4枚(積層する枚数に依存)用意する。TPS Flexセンサーの両外面にサンプルを配置(サンプルスタック)、さらにステンレス標準試料(Conductive backing)をその両面に設置する。その後、専用クランプ治具でサンプルスタックをセットし、しっかりと押し付けて保持、センサーとサンプルの密着性を良好にする。
熱伝導率 λ W/mK | |||
種類 | ポリイミド、カプトン® | ||
膜厚(μm) | 25 | 55 | 255 |
TPS Flexセンサー (薄膜ユーティリティ) |
0.1948 | 0.1949 | 0.2087 |
25 μm~225 μmの厚みをもつフィルム状サンプルに対しても、TPS Flexセンサー(薄膜ユーティリティ)を用いることで、互いに良く一致した良好な熱伝導率値を簡便に評価できた。
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